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149.過去の残像(透side)
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ー子どもの頃、俺は施設で暮らしていた。
そこは親のいない、身寄りのものがいない、どこにも行くあてのない子どもたちの集まりだった。
そこにある日俺に声をかけてくる余所者がいた。
『こんにちは。』
「…あんた誰」
睨みながら呟けば、そいつはクスクスとおかしげに笑った。
『聞いたよ。君はこの施設で1番の問題児らしいね』
「ふん、アンタにカンケーないだろ」
『人に迷惑をかけてはいけないな。君の為を思って保護してくれているんだよ』
俺は諭すように話しかける男に、鋭い目を向けた。
「俺はそんなこと1度だって頼んでない!!!」
男は少し驚いた顔をして俺を見た。
そして数日が経ち、またあの男が訪れた。
『やあ』
「帰れ。お前胡散臭いんだよ」
俺はまた男を睨みながら言った。
しかし、男は何を思ったのか俺に向かってこう言った。
『君をここから出そう。』
「何言ってんだ?」
『俺の家においで。一緒に、家族になろう』
そう言って男はスっと手を差し伸べた。
それが、そいつこそが、立花 蒼慈という名の男であった。
連れていかれたヤツの家は金持ちだった。
『さ、これからゆっくりすればいいよ。うちには親以外にメイドや執事もいる、あまり迷惑はかけないように』
初日に言われたその言葉を、俺は聞くことは無かった。
『蒼慈さまっっ!蒼慈様っ!!』
『おや、どうしたんだ。』
『また蒼慈様がお連れになったあの子ですっ!食器を30枚も割られました!細々したものを言い出すとキリがありませんっっ!』
『はは、元気だなぁ透は。』
『そんな呑気なことを言ってる場合ですかっ!今すぐあの子を追い出してください!』
俺は様々な面倒事を引き起こし、影でそう男に困り果てたように話す奴らの声を聞き楽しんでいた。
男は、そんな俺を時折注意したが、俺が男に絆されることはなかった。
そして高校生に上がる頃、俺は煙草を吸うようになっていた。よく酒も飲むようになった。それに伴い、ガラの悪い連中とよくつるむようになった。
『蒼慈様、お話が……ーはっ……と、透様……』
「おい退けよ。つうか俺の視界に黙って入ってきてんじゃねーよ。この役立たずが」
『…っ……も…申し訳、ございません…』
家に、俺に楯突く者はいなかった。
男の母親は死んだのか離婚したのか、元々おらず、父親はほぼ会社にいる為、家には必然的にほぼ俺と男と、メイドたちのみ。
「悪いと思うなら土下座しろよ。ほら早く。床に頭をつけてな」
『…そんな…』
「でないと何するか分からないぜ…俺。腫れるまでその顔、殴ってやってもいいんだぜ」
『…!』
青い顔をして体を震わせる召使いに対し、俺は口元を緩め笑っていた。しかし、
『透、やめないか』
現れた男に、その楽しみを邪魔される。
『透、いい加減メイドたちを怖がらせることはよしなさい。するなら、俺に何かすればいいだろう』
「……」
『そ、蒼慈様っ…良いんですっ、どうかお気になさらず。蒼慈様に酷いことはさせられませんっ』
俺と男は静かに睨み合った。
そして俺はその目をぱっと逸らした。
「あ〜しらけるわ〜〜」
『透!まて、こんな時間にどこへ行く!』
「うるせえなぁ、俺のすることに口出ししてくんなよ!!」
『…透!』
俺は毎日、毎晩喧嘩に明け暮れた。外の世界でも、俺に歯向かう者は少なくなった。
俺はアスファルトに倒れた屍の背中の上に足を乗せながら、顔を上にあげ、天を仰ぎ声を上げて笑った。
「俺に歯向かうやつは全員潰す!」
俺は手に殴った際に付いた相手の血をつけながら帰宅した。
『きゃあぁぁっっ』
「うるせーな」
俺は喚くメイドを押し退けてシャワーを浴びた。
浴室からタオルを肩にかけて出ると、目の前に男がいた。
「…なんだよ」
『……』
「俺を叱る気か?だが、俺をここに連れてきたのはあんただ。あんたの思い通りに俺が育つとでも思ったのか!俺が更生するとでも?…アハハハハハッッ!お前の賭けの負けなんだよ!」
カーディガンを羽織った男は俺をじっと見ると、少ししてゲホゲホッと咳き込んだ。
『蒼慈様っっ!』
すぐにメイドが駆け寄る。
『蒼慈様、早くお部屋に…。』
『平気だ、このくらい』
『何を言うんですっ。お体にご病気を患っているというのに……』
…そう。
俺が17歳を迎えていた頃、義兄である立花 蒼慈は、とある病気にかかっていた。
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