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153.不審な手紙(透side)
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「行ってきます。」
「おー」
送らなくていい、と頑なに言う凛人が家を出てから、しばらくソファに横になってくつろいでいた俺はすくっと立ち上がった。
……つうか、そろそろ仕事見つけねーと。何普通に寝そべってんだ、俺は。
それにしても、まさか凛人と立場が逆転するとは…人生何が起こるか分からないもんだねぇ…。
そう思いながらとりあえず、とのんきに朝のコーヒーを飲んでいると、郵便受けに何かが届いてるのを発見した。
ふん、またくだらない広告か。
そう思い手に取ってみると、数枚のチラシと、その中にひとつだけ違和感満載の白い手紙のようなものを見つけた。
…あ?なんだこれ?やけに厚みがある。
すぐに中を開けてみると、中から大量の凛人の写真が溢れ出てきた。
これは…盗撮か。見ると、主にバイト中の制服を着た凛人が映る写真が多い。
「……ち、ストーカー野郎め」
最初から分かっていたことだったが、やはり婚約指輪ごときじゃ虫除けできなかったか。
凛人も過去にこういう経験はあるんだろうが、特に慣れはしていないだろう。
凛人を怯えさせて気を引こうと思ったみたいだが、…残念だったな。
俺はビリビリとその写真を破ってゴミ箱に捨てた。
しかし厄介だ。こういう輩ははっきり言わないとしつこく付き纏ってくる。…そうだな、こっちから誘き寄せるか。
「は…疲れた、今日人多くて」
夜、ご飯を食べながら凛人が息をついて言う。
「辞めたっていいんだぜ。別に生活苦しいわけじゃないんだからよ」
それどころか変なストーカー野郎まで付いてくるし、ほんとお前を外に出すとろくな事がないぜ。俺は心の中でそう呟く。
「ううん、まだするよ。せめて透さんが仕事に就いて安定するまでは」
「おい何年も続ける気かよ、いいって言ってるだろ。お前が働いたってどうせほんのちょっとの金しか稼げな…」
……しまった。
「…そうだね。どーせ僕が働いても透さんほどは稼げないし、僕はどうせ半人前の大人だよ」
ぷいっと顔を背ける凛人に俺は内心やっちまった、と思う。
「とにかく…、お前バイト辞めろよ。俺も仕事に就くし、無理に働く必要なんて」
「辞めないよ、せっかく仕事も覚えてきたし。それなりに楽しいし。本当に透さんがちゃんと働くようになるのが分かったら考えてもいいよ。」
…何で上から目線なんだよ。
「あー働くよ、働く!だからお前は仕事辞めて家に戻れってば」
「だから辞めないって言ってるじゃん!」
一丁前に歯向かってくる凛人に俺はピクっと眉を動かす。
「ほんとにお前は言うこときかねーな!」
ちょっとバイトを許してやったらすぐこれだ!
「あんたの言うことなんか一々聞いてたら僕の身が何個あっても持たないんだよっ!」
カチン
…なんだと?自分がどういう状況かも知らないでこの野郎。
「凛人お前この俺に向かって…ーッ!」
「もう僕自分の部屋に行くからっ!」
「あっ、おい!こら待てっ!おい凛人!!」
素早く自分の部屋に駆けていく凛人に俺は唸りながらその場に立ったまま頭をぐしゃぐしゃとさせる。
あぁーったく!何で俺があんなガキ相手にこんな思いしなきゃなんねーんだよ!
あーッッもう知るか!!勝手にしろ!
後でどこぞの野郎に襲われても俺は知らねーからな!!!
はあっ、と俺は眉を寄せながら椅子に腰掛ける。
すると傍にいつの間にか佇んでいたタマが、こちらをじっと見つめる視線に気づく。
「おい、なんだよタマ。その目は」
「ミャ〜ァ」
「ちっ、うるせーな。心配しなくてもあいつには何もしねーよ。」
俺は頬杖をつき、目を閉じながら軽く息をついた。
…仕方ねぇな。要は仕事に就きゃあいいんだろ、仕事によ。
俺はそれから、ちら、とゴミ箱に捨てられた凛人の映る写真を見た。
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