アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
162.罠(透side)
-
ー
「俺そろそろ帰ります、やること終わったんで」
「立花さん仕事早っっ!今日中に到底終わらないってほどの量あったのに」
…それは同僚のお前が無能だからだ。
とは、言わない。
「そうか?それほど大した量じゃなかったけど。」
それに、やること済まさないとここの部署の年寄り上司が無駄に文句垂れてうるせぇからな。
新人イジメのつもりか何か知らんが。
「先に失礼します」
一応そう上司に声をかけると、上司はちら、と俺を目で見上げ、ああ。と一言返すのみだった。
あーあ〜ったく感じ悪ぃぜ。よくもまあこの俺に、何人もの人間を病院送りしてきたこの俺に、そんな口がきけたもんだぜ。
あーあ、とっととこんな会社辞めてぇなぁ…。
会社を出て車を走らせ、途中にあったコンビニの駐車場に車を停めてからふう、と外で煙草を吐きながら息をつく。
(ストレスで煙草もなかなか辞められねぇなぁ……)
タバコの煙を吐きながら俺は夕闇の空を見上げた。
ー〝あの子を、…凛人を頼んだぞ。〟
「……は」
俺は空になった煙草の紙箱を片手で握り潰し、口端を上げた。
「…お前に言われなくとも」
俺は再び車に乗り込み、凛人の元まで車を走らせた。
〜♪〜♪
…ん?
すると、信号待ちをしている時スマホの着信音が不意に鳴った。…なんだよこんな時間に、まさか会社からか?
ぱっとスマホを手に取ってみると、表示されていた相手の名は七星だった。
…七星?なんでまた今更あいつから着信なんかが。
しばし取るか迷ったが、出ることにした。
「もしもし」
『…!とおるさんっっ!出てくれた』
嬉々とした七星の声に俺は眉を寄せる。
「一体何の用だ。」
車を走らせながら俺は尋ねる。
『何だと思う?』
「は?」
七星の言葉に俺はさらに眉間に皺を寄せる。
「おい、くだらない話なら切るぞ」
すると、電話口にまって、と七星の声が聞こえた。
『今、うちの別荘にあなたの大事な恋人が来てるの。』
……は…?
俺は七星の話に目を大きく開く。
「…どういうことだッッ」
『心配なら、早く今からボクが言うところまで来て。』
「は…」
『早くしないと、どうなっても知らないから。』
そして、ぷつっと電話は途切れた。
俺はそれから、急いで七星の言った場所まで車を方向転換させて走らせた。
バン!
「おい七星!七星!開けろ!」
車で1時間半以上かけてようやくその七星の別荘らしき場所にたどり着いた俺は、玄関のドアを音を立てて叩きながら言った。
すると、
「とおるさん」
ガチャリ、とドアを開け目の前に現れた七星。
「おい、凛人は…ー」
「バカだなぁ」
と、そのまま部屋に乗り込もうとする俺の耳に突如聞こえた七星の声。
「……なに?」
すぐに振り返って鋭い睨みを利かせば、七星は俺を落ち着いた顔で見つめ返しながら言った。
「こんな簡単な罠に引っかかるなんて。ボク、あなたのこと買い被りすぎてたのかな。」
そうして、俺はようやく背後に気配を感じることに気づく。
!しまっ…ーー
「へーえ…とおるさんってあの子のことになるとそんなに必死になるんだ。」
「っ」
「周りが何も見えなくなるってやつ?こんな簡単に捕まえられるなんて。…だけどむかつく。」
後ろ手に拘束される俺を七星が見下ろしながら睨んだ目を向ける。
「もう二度と、あの子には会わせない」
「…何言ってんだお前…ッ!」
「あなたのことはボクは把握してるつもり。だから、…少しの間眠ってもらうよ。」
そして、七星が拘束された俺の腕に向かって何か注射器のようなもので刺した。
みるみるうちに視界がぼやけ、意識が遠のくのが分かり、俺はそのうちバタッと床に体を横向きに倒した。
…凛人…
俺は強烈な眠気に抗えず、目を閉じた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
163 / 178