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166.ひとり、彷徨う
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透さんが帰らない日が2日、続いた。
僕は翌日の3日目の朝、ひとりベッドから体を起こし、全く眠れなかった目をぱちりと覚ました。
…行こう。透さんを探しに。
僕は昨夜から決めていたことを胸に思いながら服を着替えた。
「はあ、はぁ…」
マンションの近くを、バスに乗って少し遠い場所までを、僕は息を切らして探し続けた。
透さん、どこで何をしてるの?
2日も帰らないなんて、何かが起こったとしか考えられない。
だけどどこにいるのか分からない。連絡も何もつかないし、…透さん、まさか大変なことになってるんじゃないよね。
僕は息を上げながら、街まで出向いて透さんの姿を探した。
けれど、彼の姿はどこにもなかった。
…どうしよう。
透さん…もしかしてあの家を出ていったのかな。
僕が嫌になった?でも、次の日のデートの約束までしてたのにそんなこと考えられないよ。
それとも、また何か物騒なことが起きているんじゃ…。
気づけば日はすっかり暮れ、辺りは暗くなりかけていた。
僕はスーツを着た仕事帰りの人たちが行き交う繁華街の隅で、疲れきったように壁に背をつけて息を整えた。
(どこにいるのか見当もつかない…。僕は、透さんの恋人だっていうのに、僕は、あの人のこと…何も分かっていない…。)
僕は蒸し暑い気温で汗をかく額を腕で拭った。
そして、再び足を動かそうとした時、顔を俯かせ目を落とした先に数人の洒落た靴があるのが視界に入った。
僕はぱっと顔を上げた。
「君、なにしてるの?」
「え…」
僕は汗で濡れた前髪を額にはりつけながら、僕を囲むように何か企んだ表情をして足止めさせる男たちを見上げた。
「なにか困りごと?」
「…いえ…別に」
「てっゆうかかわいいね?歳いくつ?名前教えて」
男の問いに僕は眉を吊り上げ男を見返した。
「……退いて」
僕は強く男を睨みつけた。
「おいなんだよ、ノリわりーな。」
…!
そのまま男の体の隙間を出て歩こうとすると、腕をすかさず掴まれた。
「…っ…離せよ!」
すると、先ほどの表情とは違う、どこか機嫌の悪そうな男たちが僕を見下ろしていた。
「こいつ男か?」
「みたいだな。ただ、容姿は一級品だぜ」
「ふん、女じゃないのか…。だがまあいい、この際男でも。何故かこいつには惹き付けられる」
くんくんと僕に顔を近づけ匂いを嗅いでくる男に、僕はゾ…と悪寒を走らせる。
そして、後ろに立つ男に突然脇腹を手で撫でられ、さらに寒気を走らせる。
「や…やめろ」
僕は冷や汗を流しながら、いつの間にか性的な目で見てくる男たちを見て言った。
こんなとこ…来るんじゃなかった…。
そう思っても、もう遅い。
「ちょっと付き合ってもらおうかな。金がないなら、払うよ?」
ニヤついた男の手が伸び、僕は咄嗟に走り出そうとした。しかし男の腕に掴まれていた僕は逃げ出すことはできなかった。
僕は僕を見る複数のやらしい目を見上げながら、体を小刻みに震わせた。
「大丈夫だって。すぐ済むよ」
「……さ…触るな」
男が僕の耳に口を寄せた。
「大人しくしてれば、痛いようなことはしないさ」
男の手がまた、僕に触れようとした。
…ああ、どこに行っても同じようなことばかり。
どいつもこいつも下半身のことしか考えてない猿ばかり。
…透さん…
僕はここにいるよ。どうしてあなたは僕の傍にいないんだろう。
僕は男たちの手に掴まれ、どこかに連れていかれそうになった。僕は振り払えない掴まれた腕を動かしながら、抵抗した。
「暴れるなって」
僕は口元を押さえられながらキッと男を睨んだ。
「はなせ…っ」
周囲の人々はこちらに気づく様子はない。
僕は来ることのない透さんを思って、静かに目を閉じたー。
「……まて!!」
そして、僕はふと、聞こえたその力強い声にそっと目を開けた。
「…!」
振り返った先に立っていた〝あの人〟の姿を見つけ、僕は、瞳を大きく開かせるのであった……ーーーー。
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