アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
*僕として生きる。
-
短編。
(※透が拘束される前、且つ、凛人と透が両思いになった後の、凛人の話。)
ーーーーーーーー
僕は夢を見ていた。
それはとても気持ちの悪い、ぞっとするようなおぞましい夢。
幾人もの人達(男たち)が、僕に向かって手を伸ばしてくる夢。
いつ、どこに、敵が潜んでいるかわからない。
僕が生きる世界はいつだって危険がいっぱいなのだ。
疲れ果て、何度も挫折しそうになった。
でも、強く生きなければならないという思いが、僕の中にあった。
僕は時に他人に容姿を羨ましがられ、疎まれながら、僕としての世界を歩いた。
そして、気づけば僕はたった一人きりの世界にいた。
僕は川に身投げした。
しかし、救われてしまったのだ、とある男に。
彼の名前は立花 透。年齢は僕より6つか7つ上だ。
彼は出会った時から何を考えているのかわけのわからない男で、独占欲が人一倍強くて、とても怖い人だった。
しかし、たったひとつ他の人とは彼は違ったことがある。
『愛してる…。』
僕は、男に何度もそう囁かれた。
僕を、愛していると。
僕を性的な目で見る人はこれまで何人もいた。かつて憧れていた学校の先輩でさえ、僕の純粋に抱いていた想いを踏みにじったほどに。
……僕は、僕自ら、僕を苦しめ、陥れている。
だから僕は、自分のこの容姿が嫌いだ。人をそういうふうに思わせてしまうこの見た目が、僕は大嫌いだ。
けれど、彼はこんな僕を愛していると言った。
それが口先だけでないことは、彼と過ごしている過程でわかった。だけど、何故僕なのだろう。
僕と彼は、まだ、まだ、何も分からないことが多いのかもしれない。
知っていかないとならないのかもしれない。
…いいや、知りたい。
なぜ、あの時僕を。
なぜ、僕を愛しているのかを。
僕は知りたい、僕を僕として、愛してくれている人がまだこの世にいることを。
…その理由を。
僕は知りたい。
そうすれば、この容姿も決してそこまで悪くなかったとそう思えるだろう。
僕は僕を完全に認めることが出来るだろう。
…さて、もうすぐ透さんが帰ってくる頃だ。
「ミャァ」
「タマ」
僕は猫を胸に抱いた。
その後少ししてすぐ、
「ただいま。凛人」
帰ってきた彼に向かって、僕は笑顔を浮かべて言う。
「おかえりなさい、透さん」
あなたはきっと知らないのだ。
僕が、あなたが思っている以上にあなたの事を好きなことを…。
だけど言わない。言えない。
だって、こんな気持ち初めてで、恥ずかしくて。
「今日はカレーか。」
「うん。」
後ろから両手を回してくる透さんの手を触って、僕は振り返って言った。
ちゅっと透さんにキスをされた。
傍にいた猫は僕たちを見上げ羨ましがるように、ミャ〜と鳴いた。
あなたのことは知らないことが多いけど…きっと受け止められるって僕信じてるから。
だから、この先また何かがあっても、僕あなたを信じるから。
この些細な幸せを、1日1日を噛み締めながら、僕はあなたに愛され生きていく…。
はあ、と吐息を漏らしながら透さんに与えられる行為に僕は頬を染め、ほんの少しだけまだ彼に抱く自分の感情に戸惑いながら、潤ませた瞳を気恥ずかしげに斜め下に逸らすのだ。
《おわり。》
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
169 / 178