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168.行方
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「ミャ〜」
天気のいい午後、家の近くの河原で僕はタマの頭を撫でながら瞳を伏せた。
未だ透さんは帰ってこない。
(もう4日目だよ…。)
僕はぼう、としながらタマの後をついて歩く。
警察に届けを出した方がいいのかもとも思ったが、透さんとの出会いも出会いだし、届けもどこか出しにくい。透さんが何か大変な目にあっているのか、もしくは、誰かが透さんに大変な目にあっているのか、それすら定かでないとも思ってしまう。
あの人を知っているが故に…。
あの人のことを信じていないわけではない。僕はあの人を愛しているし、信じてもいる。
だがしかし、彼を信用しきってはならないと思う自分もまだ、心のどこかにいる。透さんを愛しているが、未だに僕は、時折あの人を怖いと感じる時もある…。
僕は瞳を閉じて、はあ、と息をつく。
そうしてふと顔を上げた時、つい先ほどまでそばに居たタマがいなくなっていることに気づく。
「…タマっ!」
僕は慌てて辺りを探した。
…いない。どこいったんだろう。
僕は息をあげながら必死に探した。
いない、…いない。
どこを探しても、どこへ行っても。
……あの人はもう、帰ってこない。
「……ーー危ないっ!!」
ーえ?
ふと、我に返ったとき、僕は道路の真ん中にいた。振り返った先に目前まで迫る車が見えた。
「ミャ〜…」
後に、タマの声が遠くで聞こえた。
たくさんの人の声が聞こえる。サイレンの音も。
…透…さん…。
僕はそれからゆっくりと、意識を手放した。
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