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170.温もり
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「歩けるか?」
次の日、傷も幸い奇跡的に大したことがなかった僕は、すぐに退院することができた。
僕の傍に立つ神崎さんは、ベッドから降りる僕の体をすかさず手で支えてくる。
「平気です、足捻ってすらもないし」
「いいから。俺の肩に手置いて」
必然的に密着する体に僕は一瞬瞳を泳がせる。
神崎さんが黙る僕に向かってふと顔を上げ、僕の顔を覗き込んでくる。
「…な、…なんですか」
じーと真っ黒な瞳に見つめられ僕はほんの少し緊張しながら尋ねる。
「いいや」
その後、タクシーで家まで送ってくれた神崎さんに、事情を全て吐かされた。どうやら、会った時から透さんが傍にいない事について、おかしいと勘づかれていたらしい。
「…じゃあ、話もしたし」
話が終わると、僕はそう言ってキッチンテーブルの席から立ち上がる。するとすぐに神崎さんの手に右腕を掴まれた。
「まて。」
神崎さんに握られた手から人肌の温もりを感じて僕は目を逸らす。
「放っておけない、こんな、危ない事故なんか起こすようなお前を1人にさせられない」
「…神崎さんには関係ないじゃないですか、放っておいてください」
そう言い去ろうとすると掴まれた腕を神崎さんの方へと引っ張られ、僕はまた、神崎さんの温かい胸の中にいた。
「や、…っやめてくださ」
「放っておけないって言ってるだろ!」
ドキ
僕は何故か神崎さんの胸を押し返せない。
彼から少しだけ、ほんの少しだけ、あの人と同じ似た匂いがするからだろうか…。
「…あっ!」
気のせいか、一瞬神崎さんの唇が耳に触れた気がして僕はビクッと体を動かす。
「お前…」
僕は神崎さんの胸を押し返す。
「も、もう、ほんとに…」
「抜いてやろうか」
ビク
「…な、なに言って」
僕は驚いた顔で神崎さんを見上げる。
「平気です、から」
「我慢は体に毒だぜ」
「…あぁっっ」
僕は神崎さんに体を押し倒されてしまう。
僕は透さんの言うように淫乱だ。…でも、こんなふうになってしまったのは全部透さんのせいなのに…。
神崎さんの瞳に上から見つめられ、僕は体を固まらせる。そして、首元に顔を埋められ舌で舐められる感覚に僕は体をゾクゾクとさせた。
ー『もし万一にでも俺以外の男としようものならお前のアナを一生…』
……はっ
僕は我にかえるように神崎さんの体を押し返した。
「…そんなにあいつが好きか」
距離を空けて座る僕に向かって、神崎さんがポツリと言う。
…分からない。
あの人が好きだから突き放したのか、それとも、あの人のことが恐怖で今突き放したのか…
僕には、分からないのだ。
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