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172.決断
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「朔夜さん…」
僕は久しぶりに見る彼の姿に目をぱちぱちとさせる。そして、
「あれ、彼…もしかして透と前に一悶着あった人?」
ドキッ
「そ、そうなんですけどっ!、悪い人じゃないです、神崎さんは…」
慌てて神崎さんの前に出る僕を、朔夜さんが笑って見てくる。
「ああ、別に彼に何かしようと思ってるわけじゃないから安心して。透とは長年の付き合いだが、だがかと言って、透の為に俺が何かをするということはない。そこまで熱い友情で結ばれているというわけでもないしね。俺たちは」
サラリとそう言ってのける朔夜さんの眼鏡の奥にある瞳はにこやかであるように見える。どうやら嘘ではなさそうだ。
「そんなに警戒しないでよ、傷つくな。俺、基本は平和主義なのに」
…だって、この人ヤクザの家の人だもん…..。
「さ、こんなところに突っ立ってないで、家に早く入らないか?」
「え?」
僕と神崎さんは家に向かおうとする朔夜さんに疑問を感じながら目を向ける。
朔夜さんは僕たちを見て言った。
「話があるんだ。透のことで」
ーー
キッチンテーブルの席へ着くと、斜め前に座る朔夜さんが正面に並んで座る僕たちを見ながら割と真剣な表情をして口を開いた。
「どうやら、いま透がどこかに監禁されている可能性が高いらしい。」
…!
僕は驚いて目を大きくさせた。
…監禁?…あの、透さんが……?
「凛人くん、知ってた?」
僕は静かに首を横に振る。…知ってたわけない。もし知ってたら、僕はいまこんなところで座っていたりなんてしていないだろう。
「透さんのいる場所は…どこなんですか?」
僕は手に汗を握りながら尋ねる。
「場所ならこっちでほぼ確定できた。」
「え?」
「透に執着する人物が1人だけ浮かび上がっていたからね。」
……執、着……?
…は…っ…、まさか…。
僕はそこでふと頭に思い出す“彼”の姿に、青い顔で恐る恐る朔夜さんの方へ顔を上げた。
「…相手が誰か、分かったみたいだね」
ーー〝…あの人を幸せになんかしてやらない…。ボクを無視して…ボクよりあんたなんて。そんなことボクは絶対に許さない…〟
…そうか、彼が、あの子が透さんを…。
「今夜、透がいるだろうその場所まで行くつもりだ」
(……!!)
「凛人くん、君も行くか?今日はそれを聞きに来たんだ」
朔夜さんの瞳は揺るぎなく僕へと注がれている。
僕は隣から神崎さんの視線を感じながらゆっくりと目を伏せた。
僕は目を開き、言った。
「……行きます。僕も、透さんの元まで連れて行ってください」
…透さん……、何故だろう。
遠くから、あなたの僕の名を呼ぶ声が聞こえる…ーー。
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