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173.拉致
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「じゃあ、また後で迎えに来るから」
そう朔夜さんは言い残し家を出ていった。
僕はまだ部屋に残る神崎さんの方へ目を向けた。
「…行くのか?」
椅子に座ったまま、その場に突っ立つ僕を見て神崎さんが尋ねる。
僕はゆっくりと頷いた。
「はい。僕、行かなきゃ…」
顔を俯かせ呟く僕の傍に、いつの間にか神崎さんが立っていた。
「…危険だ。」
「…」
「あんな男を監禁するなんて、只者じゃない。力技じゃないとしたら、大分イカれてる。そんなやつのところに、お前を行かせたくない」
僕は首を振る。
「でも、あの人が僕を待ってる。」
透さんが…。
「僕が行かなきゃいけないんです」
神崎さんは僕からスっと顔を逸らす。
「…どこがいいんだよあんな男」
顔を伏せた神崎さんの眉が寄せられているのが分かる。
「事情がどうであれ、お前が事故に遭うくらい心配させて、現にお前を1人にさせてるような男」
「…」
「俺の方が、絶対お前を幸せにしてやれるのに…。不安になんか絶対させないのに。なんでなんだよ」
僕は神崎さんから瞳を逸らす。
…分からない。僕にも、何も。分からない。
でも、僕……
僕は……
「……僕、…あの人を愛してます。」
…会いたい
会いたい、透さんに…
ただあの人に、会いたくてたまらない…ー
「…そうか」
ぽつり、神崎さんは呟く。
「そんな潤んだ目で俺を見るなよ。…俺にお前を、止める権利なんてないよ」
「…」
神崎さんはそして、玄関のドアを開けた。
「気をつけて行ってこいよ。じゃあな」
パタン、とドアが閉められた。
その後僕はひとり、夜迎えに来る朔夜さんを待っていた。
ふとインターホンが鳴り、僕は迷わずオートロックを開け、玄関先の鍵を開けた。
「朔夜さん早かったですね…」
そう言いながらドアを開けた時、僕は目の前に映った人物にはっと目を大きくさせた。
「しばらくぶりです」
目の前にいたのはあの旅館で会った時の、お兄さんだった。いや、本当はそれは嘘らしいけれど…。
「一体なんの用ですか?」
スーツに眼鏡をかけた微笑を浮かべる男を見て僕は後ずさりしながら尋ねる。
「一緒に来てもらいたいところがありまして。」
「…は?」
すぐに腕をぐっと取られ、僕はやめろ…!と慌てて声を上げる。
「ミャー」
「タマ…っ」
僕はリビングからこちらを見るタマを見つめ叫んだ。
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