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1-④ 星勇輝
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❁
「あ、あの…ありがとう……ございました。」
「どういたしまして〜。」
2度目の起床。
ようやくチャラ男くんの名前を教えてもらう。
ーーー星 勇輝(ホシ ユウキ)
意外と普通の名前だった。
「なんでこんなとこに居んだっけ……。」
「うちのごみ捨て場に転がってたから拾ったんだよ。」
「ごみ捨て場?……あぁ。」
思い当たる節はあるみたいだな。
まぁ細かい事情は後で聞くとして、随分と長い間寝てたんだし腹減ってんだろ。
飯作るか。
といっても急だし簡単なものしか作れないな。
「一応服は洗っといたけどまだ乾かないから、飯食べるぞ。」
「別に空いてねぇから要らない。」
「でも昼飯食べてねぇだろ。」
「要らない!」
その渋る意思とは裏腹にタイミング良く、ぐぅぅ…と長めの音が鳴る。
「……。」
「……鳴ったな。」
余程恥ずかしかったのか勇輝くんは先程まで使っていた毛布で顔を隠してしまった。
はは、耳まで真っ赤。
可愛いとこあんじゃねぇか。
「すぐ作るから待ってろ。」
「空いてねぇって。か、帰る!」
「いいから座れって。ほら出来たから食えよ。」
コトッと目の前に温かいうどんを差し出す。
しかし食べようとせず意味もなくプイとそっぽを向いた。
本人は興味ないふりをしているが、チラチラ見て瞳をキラキラさせてちゃモロバレなんだよなぁ。
「アレルギーでもあるのか?」
「ち、違うけど…。」
プライドが邪魔をしているのか、はたまた何かに迷っているのか眉間に皺を寄せて険しい表情をしている。
さっきとは打って変って遠慮がちな態度に、逆にこっちが気を遣わないといけない気分になって調子が狂う。
そして温かいうどんをすぐに食されないことが何よりももどかしい。
「俺も腹減ってるから食べるし気にすんな。てかお前は拾われた身なんだから俺が食えって言ってんだから食え。」
「ひっ…。あ。た、食べます。」
「おう食え食え。」
そう促せばいただきますと小さな声で手を合わせ、箸を手に取りそそくさと食べ始めた。
初めこそ視線を気にしていたが空腹には勝てなかったようでうどんはみるみるうちに減っていった。
意外にもあっという間に完食してしまった。
「ごちそうさま…でした……。」
「おう。食べれんじゃん。」
どうやらうまく麺を啜れないタイプだったみたいで、彼なりに人前で食べることを気にしていたらしい。
箸で麺をいちいち口に運んでもごもごしていたのはちょっと可愛かった。
「で、聞きたいことがあるんだけど。」
飯食って腹も落ち着いたところで、今朝のことについて聞いてみることにした。
そもそも人んちのごみ捨て場で寝ることなんて滅多にある事じゃないだろう。
何故そんなことになったのか。
介抱した側としてはやはりそこが1番気になる。
喧嘩なのか、それとも絡まれたのか、それともただ酔っていただけとか…。
「今朝、何があったんだ?」
「……アンタには関係ない。」
あ?
頭沸いてんのか?
と言いたくなるところをぐっと堪えて話を続ける。
「いや大いに関係あんだろ。うちの敷地内で野垂れ死ぬとこだったじゃねーか。」
「別に死にはしない。」
「んなこと知らねぇよ。介抱したんだから何してたかくらい聞く権利あんだろ。」
「…答えなきゃならん義務もない。」
なんなんだその態度は!?
仮にも助けて貰った人に向ける態度じゃねーだろ。
優しくて定評のある俺でさえもさすがに堪忍袋の緒が切れそうだ。
「そんなん屁理屈じゃねぇか。」
「だって。」
「だってもクソもねぇだろ。人間ってもんはギブアンドテイクで成り立ってんだ。俺にもなにか見返りがあっていいんじゃねーの?」
「……。」
❁
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