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はじめて3
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オレは昨日の記憶だけがごっそり抜け落ちていた。
「じゃあなんだ、なんも覚えてないのかよ」
「んー…むり」
「うわ、勿体ない。つーか、最低」
「ぐっ」
さすがにこれに対しては何も言えない
確かにそこに至るまでの経緯はおろか
無理やりしてしまったかもしれない行為すら思い出すことができなかったのだから
「まあ、そのうち何かの拍子に思い出すかもしんないしどんまいってことで」
あからさまに落ち込み始めるオレに新堂は慣れたようにそう言ってもう興味が薄れたのか机の上に放置していた鞄からペンケースやらルーズリーフやらを取り出し始める。
その姿を横目に項垂れながら机に放っておいたスマホで時計を確認すると
講義が始まる五分前だった。
まだ教授が見えていないことをいいことに
少しでも気分を変えようと思いっきり伸びをする。
「ッ」
「どした?」
「…いや、」
朝感じた違和感のような痛みに顔を顰めるけれどそれは一瞬で
何でもないと首を振る。
「ん?待てよ?」
「なに」
今度は新堂が顔を顰め始めた。
「昨日、サークルの飲み会だったろ?」
「え……あー…そうか?んー、そうだった、け?」
昨日の記憶ほぼ丸ごとないオレはそれすら忘れていた。
先輩の口車に乗って入ったサークルの新入生歓迎会があると聞いて
オレは飲めもしないのに大学近くの居酒屋に行った、らしい
言われてみればそうだった気がする。
「もしかしてそれも忘れてたのかよ」
「ははー」
「まあいいわ。それで、お前相変わらず酒ダメだろ?」
「あー…そうだな」
オレは強い酒だったら匂いだけでも顔が熱くなるくらい極度の下戸らしく今まで酒とは無縁の世界にいた。
一度高校の時に酒入りのチョコレートを貰って高級なやつだからと
嬉々として食べたら盛大に酔っぱらったらしい。
というのも、オレ自身食った記憶も曖昧で
以後、家族友人からは酒は飲まない方がいい念を押されていた。
確かその時も、記憶のない次の日は頭痛と気持ち悪さに襲われた気がする。
「お前王様ゲームのくだり覚えてる?」
「王様ゲーム…」
また古典的な
そんなことやっていたのか
と、
フラッシュバックするように一瞬
音が、映像が流れた。
聞えたのは黄色く甲高かったり、野太い雄叫びにも似た盛り上がる声
それから甘く吐き出される息遣い
頭はひたすら警報を鳴らしていた。
これは、オレの…?
ぬるりと熱い何かが舌先に絡まって口内を犯される。
頬に添えられた手が顔を背けることを許さず
逃げようと腰を引こうとすればそんな力がどこにあるのか
細い腕ががっちりと身体に巻き付いてそれも叶わない
舌に広がるどこか懐かしい苦みのようなものが
身体の内側から熱を灯すように染み渡る。
「林さあ、」
新堂の声にハッとする。
今の、は…なんだ?
「朝隣にいた人って…」
「っ」
何となくその先を聞かない方がいいのではないかと本能的に思った。
けれど、そんな感覚すら無意味だというように
「あ、」
新堂が何かを見て声を零した。
なに?と聞く前に後ろからオレの首に細い腕が巻き付いた。
「あんた、ふつう何も言わず出ていくか?」
「は、」
サラリと頬を掠める白と耳を擽る艶やかな低い声
その髪に、声に、オレは覚えがあった。
今朝型ベッドの上で見た綺麗な顔がオレを見下ろしていた。
すり、と頬を撫でる手のひらに先ほど頭の中に流れたあの映像が鮮明となって再生される。
「あ?何驚いてんの」
綺麗なお姉さんだと思っていた人は
ガラのわるそうな声を出す、
綺麗で真っ白な男の人でした。
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