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はじめて8
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考えるのをやめた。
なんて、実際思考を止めるわけにもいかず
使い物にならない頭を必死に巡らす。
「詐欺…!」
「はあ、俺はちゃんと言った。」
「え?」
言った?
綿貫さんがオレに言ったことって…
「あんたが覚えてないって言った時『はじめてだったのにな』って」
つまり、あれは綿貫さんのはじめてではなく
オレのはじめてってこと!?
「あんたの『はじめて』を奪ったんなら俺は『責任くらい取らねえとな』って言ったろ?」
口をパクパクと動かして何か言ってやろうと思ったけれど
オレの口からは言葉は何も出てこなかった。
じゃあなに、オレ、ずっと勘違いしてたってこと???
いやいやいや!
首を振って正気を保つ
衝撃的な情報が多すぎて頭はパンクしてしまいそうだ。
「じゃあ恋人になれって何!」
「それはあんたが何でもするっていうから」
くっ!
確かに言ったけども!
「じゃ、じゃあ責任っていうのは?!」
男二人ベッドの上で上半身裸で何の言い合いをしているのだろうか
ムキになっているのはオレだけだけれど、一周まわって落ち着いてきてしまった。
「人間の生活に必要なのは衣食住だろ。服買って、飯買って一緒に食ってこうやって家にもよんでる。ちゃんと責任は果たしてるだろ。」
何度目かわからないが唖然とする。
いや、うん、確かに買い物行ったときやたら服とか買ってくれるなーご飯奢ってくれるなーよく家に呼ぶなーとは思っていたけども!
なんだかこんなにムキになってるのがばからしくなってきた。
はあ、と起こしていた身体をベッドに倒す。
正直はじめてのことなんて覚えてないし
綿貫さんと過ごす日常はオレにとってもう居心地のいいものとなってしまっている。
なら、もういいのか、な?
「もういいか?」
「うっ、ぁ…ちょっ!」
オレの気持ちを見透かしたかのように気だるげな雰囲気を纏い
胸元から腹の上、腰へと指先を這わせた。
「俺はちゃんとあの日、聞いた。」
ほんの少しだけ寂しそうに見えたには、見間違いだろうか
ピタリ、と指先が止まる。
瞬きをすれば空いた手のひらが頬を撫でた。
「『触れたらもう止まれないけど、いいのか?』」
「っ」
聞き覚えがあるその言葉
どこで、オレ、どこでその言葉を聞いたんだっけ
ゆっくりと落ちてくる唇
きっと止めることも逃げることもできる。
あの時も、選択肢を与えられたのは、オレだった。
覚えていないはずなのに身体は勝手に動いていた。
「『触って、ください』」
綿貫さんの首に回した腕を引き寄せた。
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