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「ね、写真撮ってよ。」
「写真?」
「もうすぐ卒業だしさ、あと俺たちの記念日に。」
「急にどうしたよ。」
そう言ってキョウヘイが携帯を渡す。
「え、俺が撮るの?」
「頼んだよー。」
「撮るの下手なの知ってるだろ。」
「そうだっけ?」
渋々後ろに下がり丁度キョウヘイの全身が写るところまで来ると「もうちょっと下がって」と言った。
ブランコに座る様に窓枠に腰をかけた姿が西日に照らされて、まるで映画のワンシーンのようだった。
こんなに綺麗な景色なら、部活やってた時にちゃんと見ておけばよかった。もう少し遅い時間になったら、きっと校庭の奥に建ち並ぶビルが色とりどりに輝くのだろう。
ぼう、とキョウヘイを眺めていると肌寒い風が窓から吹き込んだ。
校庭の砂と、机のしけった木の匂いと、乾燥した冬の空気。まだその時間の住人でありながらも、青春の匂いとはこの事なんだろうと感じた。
いつかまた、思い出せる様に。そう思いながら肺いっぱいに乾燥した空気を吸い込んだ。
深呼吸してカメラを向けると逆光でキョウヘイの顔が上手く映らない。仕方なくフラッシュ機能に切り替えてピントを合わせた。
「じゃあ撮るぞー。」
画面に一瞬黒が映る。
元に戻った画面には、ただ綺麗な夕焼けだけが写し出されていた。
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