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遠距離恋愛10。sideーa
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急激に体温が上昇する、未だに慣れない感覚。
どうにも俺は体質的に酒とは相性が良くないらしい。
けれど、俺は嘘でも快楽とは言えないその状態に陥らなければ
今でも思い出すのが怖いんだ。
どこかぼーっとする頭でなら
君の事を考えても、身体がマヒして痛くないから。
「高校の頃、の…話なんだけどな。」
忘れたくて、忘れたくなくて
思い出したくなくて、でも想わない日なんてなくて。
誰かに言いたくて、でもいつまで経っても勇気が出なかった。
俺の気持ちは嘘なんかじゃなかったと
確かにそこに存在していたのだと証明したくても、
それを言葉にして、形にしてしまうのは
この先誰かと幸せになっていくであろう君の
足かせになる可能性が否定できなかったからだ。
啓斗くんはそんな臆病な俺に手を差し伸べてくれる一筋の光のようにも見えた。
菅沼に溢れんばかりの愛情を注ぎ、菅沼に心の底から愛されている
そうなる為に努力を惜しまず一歩も引く事のなかった、正直で一生懸命な啓斗くんは
俺とは違う。
好きな人の幸せを願って、自分の心を殺してきた
俺や、斗真とは違う。
恐らく俺達とは相容れない関係にであろう啓斗くんになら
いっそ話せてしまうのではないか、なんて。
――もう、あの出会いから6年以上もの月日が経っているなんて
自分でも信じられないよ。
病弱なのかと思ったら、そういうわけでもなくて
勉強だって、面倒な委員会だって、いつもひたむきに頑張ってたよな。
その全てが、担任の為だと薄々感じ始めていた中
それが確信に変わった卒業式の教室。
友達で良かった。
元々、それ以上なんて望んでいなかった。
だけど、あいつの涙を見ると
どうしても俺が何とかしてあげなきゃいけないって。
斗真の事、少しでも笑顔にしてやりたいって思った。
思い付きだけのふざけた行為は、勿論空回りに終わったのだけれど。
『芦屋、卒業おめでとう。よく頑張った。』
『ありがと、先生。…あのさ、1個だけ質問しても…いいですか?』
『ん?どうした?』
『先生は…、どうしてあの人と結婚しようと思ったの?』
『…え~?そりゃまあ…あれだろ。
俺の事を一番見てくれて…気にしてくれてたから…この人が奥さんなら幸せになれるんだろうなって思ったからだよ。』
『………そっか。うん…ありがとう。』
先生と交わした最後の会話だ。
今でも鮮明に覚えている。
涙が出た。
悔しくてたまらなかった。
誰より先生を見ていたのは斗真なのに
誰より先生の事を気にして、先生の為に頑張っていたのは斗真なのに。
そんな斗真をずっと…俺は見ていたのに。
報われる事はないと知っていながら
それでも先生を想い続ける斗真を
俺は…想い続けた。
卒業後、何度か同窓会の誘いもあった。
でも、斗真にどんな顔して合えばいいのかわからなくて
俺は逃げた。
気持ちの整理もつかず、もし酒に酔った斗真を見たら
気持ちを伝えてすらいないのに、もし俺が酔って何か余計なことを言ってしまったら。
斗真に拒絶される事だけは耐えられなかった。
だから、連絡も取れないまま
一歩も前に進めないままで
気付けば卒業からもうすぐ4年。
「だから、啓斗くんは凄いよ。」
残り2口程度の酒を勢いよく煽り、
ぐわんと歪んだ啓斗くんに無理やり笑顔を作った。
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