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遠距離恋愛12。sideーs
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目を開けると、隣によく知った温度を感じた。
「…啓斗君、今何時?」
優しすぎる手つきで俺の髪を撫でる人物に
回らない頭で問いかける。
啓斗君はスマホを見ていた顔をこちらに向けて
覇気のない笑みを浮かべた。
「あ…起きた?今1時だよ。
お風呂勝手に借りちゃった。」
「それは別にいいけど…。」
重たい身体をなんとか起こし、
ぐるりと部屋を見渡すと
一つ、違和感を覚える。
この家の主が、いない。
俺たちのこと、気遣って車にでも行ったか?
…でも、だったらどうして
いつもあいつが座ってる場所に俺の酒が置いてあるんだ。
「啓斗君、芦屋は?」
啓斗君の瞳に宿る影が、より一層深いものに変わる。
俺は別に、泣きそうな啓斗君を見たくて呼んだわけじゃないのに。
無理やり笑顔を作る啓斗君と会いたかったわけじゃないのに。
どうしてそんな顔…するんだよ。
「あいつになんか言われたか?どうした?」
「………しやさん…俺のせいで、傷つけちゃったかもしれない…。」
「…本当に何があったんだよ。」
「…っ。」
眉間に少しだけシワを寄せて
俯く髪の隙間から見える唇は、傷になりそうな程強く噛まれていて
そんな弱々しい啓斗君すらも格好良い…なんて思う俺の目は多分イカれてんだろうけど
でも、今はそれが見たいんじゃない。
俺は啓斗君の笑顔を
たくさんたくさん、見ていたいんだよ。
「大丈夫だから。…な?
芦屋とは…まぁ付き合いだけは長いから、あいつが何考えて出てったかとか、お前よりは多分わかるからさ。」
「………うん…、あのねーー。」
啓斗君は、俺が眠っている間に起きた出来事
話した事、自分が言ってしまった事
少しずつ、話してくれた。
俺も芦屋と離れている間あいつがどう生きて来たかなんて真面目に聞いた事はなかったから
啓斗君の口から初めて聞いたことも多かった。
芦屋の面倒見の良さに甘えて
だから事ある毎にあいつを利用して
あいつを忙しくさせることが
まさかあいつの事を救っていただなんて。
考える時間も無くしてしまいたいほど
苦しい恋をしていただなんて
俺は知らない。
啓斗君の真っ直ぐな心が怖くて逃げたあの時の俺に向けた言葉が
妙に重たく感じたのは
そういう事か。
「芦屋ってさ、お人好しなんだよ。相手のためなら自分が傷つく事もお構いなしっつーか。
…だから、自分の意志ちゃんと持って、こんな俺の事、もう一回捕まえてくれた啓斗君が羨ましかったんじゃねえの?」
確かに啓斗君と芦屋は違う。
が、芦屋の事はかけがえのない大切な友人だと思ってる。
啓斗君に対してとは違う、別の形の愛がそこにはある。
そんな芦屋が啓斗君に俺にも話したことのないようなことまで話していたのは…ちょっと妬けるし悔しい。
でも、啓斗君だから
弱虫で、世の中を冷めた目で見てしまうような俺達とはきっと何もかも違う啓斗君だから、話す気になれたというのなら。
「あいつも、もっと自分を大事にできるようになると良いよな。」
俺は芦屋とバカみたいに酒飲んで笑って
互いの恋人の話なんかをしてみたい。
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