アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
1
-
律儀に恋をする事を願っていた俺は、お堅いのだろうか。
二十歳を迎えて、ようやく大学の仲間とビールのジョッキを掲げる事が、素直に嬉しかった矢先、生まれてこの方彼女という存在が居ない事がバレると、皆は口々に、それは勿体ないと言い放った。
何が勿体ないのかと言えば、皆からすると、俺は青春を謳歌していないらしい。
彼女について憧れる事は全くなかったわけではない。けれど、好きな人ができた事がない場合はどうしたらいいのか。
興味本位で付き合ったとして、やっぱり合わないと分かった時、好きじゃありませんでした。なんて言える訳がない。
そう俺が言うと、嘘も方便だと皆は言う。
「適当にできるのは若い内だけなんだから、遊ばないと。これも経験だぞ」
三か月ばかり早く二十歳を迎えた友人が言うと、周りは深くそれに同調し、俺は「そういうもんか?」と首を捻りながらも、とりあえずその場を収める為に頷いて見せた。
――けれど、皆の言い分が頭から抜けない。恋をする事というのは、そんなに蔑ろにされて良いものだろうか。
それとも俺の考え方が、古いだけだろうか。
俺は首を捻り、一向に出ない答え探しながら、脚にある多少の浮遊感に捕らわれ、帰路に就いた。
初めて飲むアルコールに、身体が弄ばれているように、脚も手も頭もふわふわと心地良い。けれど、頭の芯の部分だけははっきりと覚めている妙な感覚。
たかがビール二杯と言えども、初回にしては飲み過ぎてしまったのだろうか。俺は明日の授業が二限からである事にほっとしながら、ようやく辿り着いた家の玄関口の門に手を掛けた。
「あ、やっと帰ってきた!」
不意に背後から声が聞こえて振り返るが、誰もいない。あれ? 気のせい? と首を傾げていると、
「司君、こっちだよ!」
そう声がして、視線を上げると、向かいの一軒家の二階のベランダに、人影が見えた。部屋の灯りを背負って、顔は影になっているが、声だけでその人物が、誰であるか、すぐに予測が付いた。
「おー、恭平。まだ寝てないのかぁ」
俺は右手を上げて応えると、一つ年下の幼馴染である、水戸恭平に声をかけた。彼は、ちょっと待ってて、と言うと、そのまま部屋に引っ込んでしまう。部屋の灯りが消えて、一分もしない内に、恭平はドアから出てくると、俺の元へと駆け寄ってきた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
1 / 9