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朝起きたら俺の愛用抱き枕が銀河系レベルの超絶イケメンに変わってました
第四話(2)
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よく考えてみれば初めからおかしかった。製造されてすぐに俺の元へ来たのなら、あんなにもスムーズに世間に馴染めるはずがない。いきなり『浅草観光に行く』なんて言いだすわけがない……。
俺には「竜美」という幼馴染みの親友がいた。……17年前まで。実家に帰ってから母に経緯を説明され、全てを思い出した。竜美がいなくなったショックで今まで記憶が飛んでいたことは、両親も……もちろん自分自身でも気づいていなかった。
あの抱き枕は竜美の愛用品だった。竜美の家に泊まるたびに、二人でよく取り合いをしていたのを知っていた竜美の母が、葬儀のあとで俺に譲ってくれたのだが……たぶん俺は、その時すでに正気を失っていた。竜美が死んでから数日間のことは、記憶を取り戻した今でもぼんやりとしか思い出せない。
……心にぽっかり穴が開いたようだ。……いや、きっとあれからずっと開いていた。あの頃のことを思い出せば思い出すほど、「ユーシン」は竜美が成長した姿であることに確信が持てる。
竜美が死ぬ前、俺はひどいことを言って竜美を傷つけた。それなのに俺は竜美のことを忘れ、再会してさらにもう一度傷つけた。
……だからこの扉を開けない。あいつがすでにこの世から消えているとしても、俺はもうあいつを忘れることはできない。あの抱き枕を見たら、きっともう自分を保てない……。
「……なんで死んだんだよッ……竜美……」
息が苦しくて、俺は自宅の扉の前にうずくまった。……あいつが死んだのもこんな寒い夜だった。俺は何もできなかった。あいつに謝ることすら。後悔してもしきれない……。
きっと「ユーシン」は、俺の未練がつくり出した幻影だ。今まで忘れていたくせに最低だ……。
「風邪引くよ、弘」
「……っ……竜美……?」
「こっち向いて?」
「……無理だ……」
これは現実じゃない。わかっている。……でもやっぱり認めたくない。あいつが死んだなんて……。
「僕はここにいるよ」
「……っ」
抱きしめられた背中が温かい。幽霊は冷たいはずなのに……。
「弘が言ったんだよ?僕がいなくなったら嫌だって」
「……幽霊……じゃないのか……?」
「17年も幽霊してたら悪霊になっちゃうよ。僕は抱き枕の付喪神ユーシン。最初にそう言ったよね?」
「……3日経ったら元に戻るんじゃなかったのか?」
「正確には3日と15時間」
「……えっ?じゃあ……」
「あと5分しかないから、弘の気持ちを聞かせて?」
「……っ……」
……やっぱりこいつは「竜美」だ。気づいた時には逃げ道が完全に塞がれている。あの頃もそうだった……。
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