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朝起きたら俺の愛用抱き枕が銀河系レベルの超絶イケメンに変わってました
第四話(4)
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「ねぇ弘、僕が抱き枕に戻らなかったの嬉しい?」
「……いちいち聞くな」
「照れてるの?可愛い」
17年前に死んだはずの、幼なじみで親友の竜美が目の前にいる。同じベッドで寝ることはよくあったが、それは子供の頃の話。こんな風に見下ろされるなんて想像したこともなかった。……だけどこうしてまた竜美といられることが、俺にとって嬉しくないわけがない……。
「言っとくけど、俺の好きはそういう『好き』じゃないからな」
「……はぁ。もう魔法解けちゃった?」
「え?」
「『最後だからキスくらいいいか』とか思ったんでしょ?どうせ」
「……」
……透視のスキルでもあるのか?こいつ……。
「……変わらないね、弘は。今も昔も僕がかわいそうだからそばにいてくれるんだもんね?」
「それは違う」
「……じゃあどうして僕をそばに置くの?さっさと追い払えば手を出されなくて済むのに」
「……それが分かったら苦労しない」
「……え?」
「生理的に拒めないんだって言ってるだろ」
「……僕が抱き枕だから?」
「……それもそうだけど……いや、けっきょく抱き枕はお前だったわけだし、やっぱりお前が……」
「……僕が……?」
……そういえば、なんで俺はこいつを拒めないんだ……?
「………嫌いじゃないから?」
「『好きだから』でしょ?」
「違う。……いや違わない。でもその『好き』じゃないからもう触るな」
「……はぁ。どこまで鈍いの?もう抱き枕に戻ろうかな……永遠に」
「……は?ちょっと待てよ……」
「いい加減にして。僕もう子供じゃないんだよ?」
「……子供じゃん」
「見た目の話じゃなくて!」
「おぉ……竜美が怒った」
「名前で呼んでって昔から言ってるでしょ!僕その名字好きじゃないんだけど!」
「なんで?呼びやすくていいじゃん」
「……はぁ。もういい。熱くなってごめん。……弘がそういう感じだって分かってたのにちょっと焦りすぎた。……頭冷やしてくる」
なんかすごい落ち込んでるし顔色も悪いな。付喪神でも体調不良とかあるのか……?
「冷えピタいる?」
「そっちの『頭冷やす』じゃなくて……あぁもう、今は天然ノーサンキュー。……可愛いけど。ちょっと黙ってて」
「……」
「……ねぇ弘、もう一回『好き』って言って?」
「……黙れって言ったくせに」
「言ってくれたら今日はそれで我慢する」
「…………好き」
「……はぁあ……生殺しの鬼……遠野弘……」
「フルネームやめろよ」
よくわからない状況になってるけど、とにかく竜美が竜美のままでよかった。これでやっと安心して眠れる……。
「竜美」
「……何?」
「ちょっと抱き枕に戻れるか?」
「……え?抱き枕ならそこにあるよ」
「えっ……?」
「その抱き枕は僕の依り代(よりしろ)で、僕にとっては魂のようなものだから大事にしてね」
「……」
あぁ……やっと分かった。今までこの抱き枕がないと眠れなかった理由が……。
「……弘?」
「……お前がいないと眠れないのは勘違いなんかじゃない……俺は……お前じゃなきゃ………ん……」
まぶたが勝手に落ちていく。何しろ昨夜から一睡もできていない。この抱き枕に触れた時点で瞬殺されなかったのが不思議なくらい、眠気はとっくに限界だ。
「まさかこのタイミングで寝るの?」
「……うん……?」
「……もう……ほんとずるいよ弘……」
「……ん……」
あぁ……愛しい温もり。やっぱり俺の抱き枕は太陽系一。いや宇宙一だ……。
「おやすみ……弘」
……でもそれ以上に、背中に感じる温もりが今は愛おしい……。
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