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妖精になんかならない
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どうしたものかと困り果てていると、後ろから元気よく声がした。
「失礼いたします。こちら生ビールでございます」
先ほどの青年が生ビールを取り換えてきてくれた。青年は御幸と寄りかかっている女性社員の間を割って入るようにジョッキをテーブルに置いた。
すると青年は女性社員の顔を覗き込み、耳打ちをするように「部長さん、誕生日なんですか?」と言った。
あまりの顔の近さに御幸は絶句した。青年はおそらく二十歳過ぎかそこらだろう。人生の中で何事においても最も精力的に活動できる年代だ。
御幸が青年と同じ歳くらいの頃、とにかく真面目に勉強をしていた。中高一貫の男子校を卒業して、第一志望だった国立大学の工学部に入学できたのはよかったが、工学部へ進学する女子はほんのわずかであった。
同じ学部にいた女子は全体の1割にも満たなかった。当然、学部の男子たちは数少ない女子を我先にとこぞって狙っていた。女子の進学率も今よりも少なかったことや、当時「リケジョ」なる言葉も存在しなかったことに起因してかそれほどにかわいらしくない子まで人気がある始末だった。
御幸は勉学をしに来たにも関わらず、恋愛に現を抜かす輩を見下していた。自分は女子などという生き物に惑わされないぞと斜に構えていたのだった。
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