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血の味がした。
切れた頬の内側が痛んだ。
俺は、
ホコリだらけの準備室で、倒れた机にもたれかかっていた。
真木に罵られた言葉が頭をよぎる。
〝お前、オナホだろ、〟
〝何、勘違いしてんだよ〟
〝役に立たないんなら価値ねぇんだよ〟
〝ゴミクズ〟
そんな事、
何度も言われなくたって分かってる
分かってんだよ……!!
叫ぶのに、声が出ない
どんなに体中から振り絞っても、声が出なかった。
そこで、ハッとして、目が覚めた。
アイボリーの天井
シンプルな照明。
俺は、清潔な匂いのするベッドに横になっていた。
隣に浅科さんの姿は無かった。
頬の濡れた感触が不快で、手のひらで拭った。
ベッドの上でゴロゴロしながら、壁掛け時計を薄目で見る。
はっきりは見えないけど、
だいたい8時30分過ぎくらいなのは、ぼやけた針の輪郭で分かった。
俺、寝てた……のか。
あれ、昨日はどうしたんだっけ……?
浅科さんとこのベッドでキスして、触りあって、……その後は、
その後は……?
あれ、……?
ヤったっけ…?最後まで……したっけ?
全然、覚えて……
覚えてない。
「……嘘だろ……信じらんねぇ……俺…」
俺は頭を抱えながら、のろのろとベッドから起き出して、リビングへのドアを開けた。
「お、起きたか。おはよう。」
キッチンスペースに立った浅科さんが振り向きながら言った。
朝の日差しがとてもよく似合っていて、なんだか眩しくて思わず目を細めた。
「……んー。」
「具合悪い?」
「……いや、別に。………つーか、俺、……もしかして寝落ちした?」
ガシガシと頭を掻きながら俯く俺を見て、
浅科さんが、ふっ、と笑い混じりに口にした。
「ぐっすり寝てたな。」
「………ッ、起こせばよかっただろ!!」
「なんですやすや寝息たててる奴を起こさなきゃならないんだよ。」
「だって……!俺だけ……ッ…、浅科さん、まだイッてなかったじゃん………途中だったじゃん……」
俯いたまま、絞り出す様に言ったら、温かい大きな手のひらに頭を撫でられた。
「…ふふっ…、…お前さぁ……まぁいいや。いいよそんなの別に。……それよりさ、今日、外に出ないか?」
「……は?」
は?
何だって?
ていうか、今笑いやがったなこいつ
何いきなり話逸らしてんだ。
「外に出かけないかって事。どこか行きたい場所無いか?」
「……え、いいよ外暑いしダルいし」
その意図がよく分からなくて動揺する。
「暑くなかったらいい?」
「は?…なんでそんな押してくんの?」
「…どうしても嫌ならいいけど。」
「いや、嫌とかじゃないけど…」
わけが分からないまま、どんどん浅科さんのペースに乗せられていく気がする。
「暑くない、…屋内ならいいのか?」
「…うるさいのも嫌だ」
「涼しくて静かな屋内。」
浅科さんは、俺が言った条件を確認する様に繰り返して、
導き出したらしい言葉を口にした。
「…じゃあ水族館とプラネタリウムならどっちがいい?」
「は?……マジで言ってんの?」
「お前プラネタリウムだと寝そうだよな。」
「秒で寝る気がする。……いや、そうじゃなくて、」
「じゃ水族館な。」
は?何、何、?
何言ってんだこの人
「マジで言ってんの?男二人で水族館?」
「嫌か?」
「いや、嫌とかじゃなくて……」
さっきと同じ様なやり取りをまた繰り返しても、浅科さんの考えてる事は全然分からなかった。
そんな俺を柔らかく笑って見ながら、当の本人は朝食の支度を始めた。
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