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本当にか?
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戦いは、はっきり言って海常の方が強い。
そのため、点差が開いている。
それでも、誠凛は諦めると言う言葉を知らないかのように、少しずつでも点を入れてきた。
火神は時を重ねるごとに強くなっていくのがわかる。
いつかは、キセキと並ぶかもしれない。
そう思わせる強さ。
でも、所詮『いつかは』である。
いまの俺には、遠くおよばない。
「なんでそこまで頑張るんスか? どうせ、練習試合じゃないスか。そんな必死こいて頑張らなくても…………」
「うっせぇ! おまえにはわかんねぇよ!」
ダンクシュートを決める火神。
なんで、意味がわからない。
勝てない相手に、どうしてそこまで必死に勝とうとする?
諦めればいいのに。
そう思うのに、なんでか嬉しい自分がいた。
そして同様に、モヤモヤとした感情がある。
なんだろう、これは。
わからないけど、嫌な感じ。
それを抱えながら、同じようにダンクシュートを決める。
「くっそ!」
悔しそうな火神。
「もう諦めたらどうっスか?」
「嫌だね。勝てないくらいがちょうどいい」
そう言うと、不敵に笑う。
なんか、昔の青峰っちみたいだ。
「別に、俺たち海常が勝つっスけどね」
「負けねぇよ」
「負けないっスよ。あいつがいる学校になんて」
ベンチの横に、車椅子に座るかつての仲間。
裏切りをした、最悪最低の奴。
そいつを見る度、自分が許せなくなる。
白川っちの方を、最初から信じていれば――――。
「黒子は、なにもしてねぇよ」
「は?」
「あいつは、優しすぎるくらい、甘すぎるくらい、いい奴だ。黒子はなにもしてねぇよ。絶対にな」
「そんなの、猫かぶってるだけっスよ。あんたらが騙されてんだ」
「本当にか? 黒子本人から聞いたのかよ」
「おまえになにがわかるって言うんスか!? 聞いたから、こうなってるんだろうが!」
「それは、本当の黒子か?」
「は? なに言って……」
震える声で、言い返そうとする。
けど、また遮られた。
「本当に、黒子か? おまえらの知る、仲間の黒子に、聞いたのかよ。偽ってる黒子じゃなく、本当の黒子に、きいたか?」
「なんスか、それ。どういう意味っスか!」
「そんなの、黒子に聞けよ。と言ってももう、話せるかどうか、わからねぇが」
黒子くんに顔を向ける。
自分を見る俺に気づいたのか、ビクりと肩を跳ねさせて、俯いて震える。
それを向こうの女監督が背中を摩って落ち着かせていた。
「なにがなんであろうと、悪いのは黒子くんだ」
「そうかよ。でもじゃあなんで、くんずけで呼んでんだ? ムカつくなら、呼び捨てでいいだろ。なのになんで、くんずけで呼ぶ? まだ信じてるからじゃないのか?」
「…………っ、火神。あんた馬鹿っぽいけど、変なとこ鋭いっスね」
俺がまだ、黒子くんを信じてる?
そんなわけ、ない。
……………………………………はずっス。
俺は…………。
俺は?
わかんない。
わかんないよ。
海常が勝ったというのに、気持ちが晴れない。
俺、どうしたらいい?
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