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え……
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「そう言えば、なんでそんな怪我したんだ?」
日向先輩の言葉に、黄瀬くんが答えた。
「試合したんスよ。霧崎第一と」
「え……」
霧崎第一って、兄さんのいる?
「そう言うことかよ。まだ、やってやがんだな」
「あいつらがやめるわけないでしょ。人の不幸は蜜の味、なんて言って、ラフプレーで選手生命奪う奴らよ?」
「だな。クソっ」
日向先輩が吐き捨てるように言う。
嫌な予感がした。
「あの……、霧崎第一と、なにかあったんですか?」
降旗くんがそう聞きました。
「俺たちには、もうひとり仲間がいる。そいつは、霧崎第一の花宮真って奴に、膝をやられて、入院中だ」
びきり、となにかが急激に凍りつき、ヒビがはいる音がした。
「もしかして、このまえ見舞いにきてたのって……」
「あぁ、そいつんとこだよ」
兄さんが、そんな……。
「そのひと、バスケはできるんですか?」
「どうだろうな。なんとかして今年中には戻るつもりらしいが……」
状況は、思わしくないんですね。
「ごめんなさい。すみません」
「へ? は? なんで黒子が謝んだよ」
「だ、だって……、霧崎第一の、花宮真は……僕の…………兄ですから」
その瞬間、その部屋だけの時間が止まった。
そして、時間が元に戻ると同時に、
『えぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええ!!!!!!????』
驚きの声が盛大に鳴る。
もちろん、静かにしなさいと看護婦さんに怒られました。
「は、はな、ははな、はな?」
「あいつが言ってたこと、本当だったんスか…………」
黒子以外は混乱している!
というような状況ですね。
「僕は、元は花宮テツヤです。両親が離婚して、兄さんは父さんに。僕は母さんに引き取られました」
「マジか」
「マジです。血の繋がった兄弟です」
茫然するみなさん。
「似てねぇ……」
「麻呂眉じゃないし」
「ゲスくないし」
「どこが兄弟なの? 共通点なさすぎ」
みなさん不思議そうな顔です。
というか、そんなに麻呂眉が気になりますか。
僕の眉毛は普通ですから、無理に麻呂眉にしなくてもいいんです。
小声でも聞こえてますよ、小金井先輩。
「でも、どうしてわざわざ練習試合で黄瀬をこんなんにしたんだ?」
「キセキがムカつくから?」
「あ、それは花宮自身が言ってたっスよ。復讐だってさ」
「復讐?」
「黒子っちにひどいことした復讐だってよ」
僕が、原因。
「黄瀬くん。すみません。僕のせいで……」
「違うっスよ。悪いのは確かに俺なんスよ。だから、俺がこうなるのはいい。自業自得だから。でも、先輩たちまで巻き込むこと、なかったんだ」
確かに、先輩たちまで巻き込む必要はなかった。
先輩たちは彼らにとって、おまけみたいなものだったのだろう。
壊して遊んでいただけ。
酷い。
ラフプレーはやめて欲しいと何度言っても聞いてはもらえなかった。
あの日も、それで喧嘩したんだった。
ちゃんと、顔を見ておけばよかった。
もう見ることができない兄の顔を、見ておけばよかった。
「たぶん、事情聴取で今日もここにきてるんじゃないスか?」
その瞬間、僕の体は自然に動いていた。
まるで引き寄せられるかのように、気づいたら僕は、帰ろうとしていた兄さんの前にいた。
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