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謝んないで
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兄さんが桐皇と戦い、そして殆どを壊したと聞いて、僕は急いで桐皇学園に向かった。
と言っても、和くんに車椅子を押してもらってですが。
桐皇につくと彼らはおらず、先生に聞くと病院の名前と場所を教えてくれた。
和くんと僕は急いで病院に向かいました。
青峰くんは無事でしょうか?
翔にぃは無事でしょうか?
皆さんは、無事でしょうか?
不安で不安で仕方がありません。
お願いです。
どうか、無事でいてください。
兄さんに、罪を背負わせたくない……。
そう思った自分に、驚きました。
なんて自分勝手なんでしょう。
怪我をした相手より、させた相手を心配するなんて……。
知られたら、怒られますね。
嫌われますね。
でも、それでも、兄さんはたったひとりの兄弟で、
僕にとっては一番だから。
――まぁ、兄さんはそう思ってないみたいですけどね。
「テッちゃん! ついた!」
和くんの声で我に返ると、そこは確かに病院の前。
中には入り、病院のひとに聞くと、病室に急いだ。
とはいっても、病室なので走ったりできず、早く早くとウズウズしてましたけど。
皆さんのいる病室の階にエレベーターが着き、まっすぐ行くと右に曲がった。
すると、和くんがいう。
「なんかひといる。黒い肌で、青い髪。桐皇のジャージ着てるし、バスケ部だな」
それに、僕は思わず大きな声で呼んでしまった。
「青峰くん!」
病院内で大きな声をあげてしまい、少し反省します。
でも、いまはそれどころじゃありません。
「テ、ツ……」
茫然と呟く青峰くん。
青峰くんに近づき終わったのか、車椅子が止まります。
僕は手を伸ばして、青峰くんの服を掴むと言います。
「大丈夫ですか!? 怪我は!? 他の選手の皆さんは無事ですか!? 翔にぃは……」
青峰くんは答えてくれません。
もしかして、このひとは青峰くんではないのでしょうか?
そう疑ったとき、青峰くんはようやく声を発しました。
「なんで……、俺じゃない……」
けれど、なにを言っているのかわからなかった。
「え?」
そう聞き返すと、青峰くんは怒鳴った。
「おまえが憎いのは俺だろうが! なのになんで他の奴らを巻き込む! 俺だけでいいだろ! なんであいつらの選手生命奪った! 見せしめかよ。俺に対する……。おまえさえ……」
振り払われた手は、そのまま空中で静止した。
「――おまえさえ……いなければ……っ!」
あぁ、そうか。
君にとっては、僕は邪魔な存在なんですね。
手から力が抜け、俯いてしまう。
「ごめんなさい……」
謝ることしかできない自分が酷くもどかしい。
かつて相棒だったひとを、ここまで悲しませてしまうなんて。
「てめっ……!」
「帰りましょう。和くん」
「テッちゃん、でも……!」
「いいから! …………帰りましょう?」
言葉に詰まり、憤懣やる方ないままで和くんは了承してくれた。
僕たちが引き返しても青峰くんは立ち尽くしたままのようで、足音がしない。
エレベーターに乗ると、和くんが言ってきました。
「よかったの? 翔にぃに会えてないし、あいつになんか言わなくて」
「いいんです。翔にぃにはあとで電話かメールします。それに……」
いまの青峰くんになにを言っても、お互い傷つくだけですから。
「また後日でいいでしょう。今日は帰った方がいい」
「テッちゃんがいいならいいけどさ。けど、傷つくところは見たくないから」
和くんの優しさに、涙が出そうです。
もちろん、出ないのですが。
胸に染みて、少し痛い。
「和くん。ありがとうございます。……すみません」
「謝んないで。俺が好きでやってるんだから」
「はい」
いまの青峰くんを支えてくれるひとはいるだろうか。
それだけが不安で、仕方がありません。
青峰くん…………。
――情けない相棒で、すみません。
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