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たとえ僕が‐白川side‐13
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話しているあいだ、ずっと有村は僕のことを抱きしめていてくれた。
それが嬉しくて、何年ぶりだかの、暖かい気持ちが溢れた。
「そうか…………」
話し終えて数秒、無言だった有村はそう言うと、さらに強く抱きしめた。
「おまえ、悪くないよ」
「どうして」
「生まれてきていけない子供なんていない。おまえは生まれてきてよかったんだ」
そんなわけない。
僕が生まれなければ、母さんは苦しまなかったんだ。
だから、生まれなければよかったんだ。
「おまえは愛されていいんだ。もっと素直になればいい。周りをはめて自分のいじめられない場所を作る必要もない。おまえは、いじめられないんだから」
「意味わかんない。僕がやったことがバレたらいじめられるでしょ」
「いいや。俺がさせない。俺がおまえを守るよ」
「それこそ意味わかんない。僕を助けてなんの得になるのさ」
「得とかいらない。俺はおまえがいればいい。おまえが好きだから」
「は?」
信じられるわけない。
そう言おうとした瞬間、口元に暖かい感触。
有村の顔がまじかにあって、柔らかいそれが、有村の唇だとわかった。
おまえが好き。それをわからせるための、優しいキス。
僕は呆然と有村の顔を見つめた。
有村はそれに笑って、まだ抱きしめた。
「生まれてきてくれて、ありがとう」
ほろりとまた、涙がでた。
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