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一本の電話
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side 飯窪
「先生、訳あり患者の転院の件で副院長とお話したいと電話が入りました」
受付からの内線。訳あり患者ってどんなよ。
「うん、分かった。こっちに繋げて」
◇
「お電話代わりました、副院長の飯窪と申します。転院の件ですね」
「突然のお電話で申し訳ありません。私皆川と申します。今、私の息子は關燦(せきさん)病院に入院しています」
關燦…って。あの關燦?
「元は心臓に疾患があって入院していたんですが、何度も手術するうちに精神を病んでしまい今では精神科の隔離病棟でよく分からない薬を投与されています」
そう、だよね。あそこはそういう病院だし…。
「中央病院は關燦病院とは違いクリーンなイメージを売りにしていると聞きました。評判もこちらとは比べ物にならないと…」
「確かに…關燦病院の内情は病院関係者でもなかなか分からない部分が多くあります。しかし、精神科だけを評するならこちらは關燦病院よりも遅れをとっています。転院をご検討されているという事なので、クリーンな精神病院をお勧めいたしましょうか?」
「…………いえ…。中央病院に転院させたいんです」
精神科もあるけど…ここは外科内科が主なんだよな。
もっと専門的な病院で診てもらった方が…。
「私の知り合いが昔、中央病院にお世話になっていたのでよく話を聞いていたのですが、私の息子と同じような状態だった方を完治させたと。確か、主治医の先生が論文を発表して話題にもなっていたと思います」
…あぁ、隼人くんか。
あれはでも、異例中の異例だから…。
「今まで医療費の面でそちらには行けなかったんですが、息子を一番に考えるとそうも言っていられない状況になってきました」
「えっと…院長は確かに、心臓疾患と精神病を併発した重症患者を治療し完治させました。それは事実です。ですが、言葉では言い表せない特殊な例でしたので誰しもに当てはめられる事例ではないんです。それに院長は心臓外科医であり、精神科医ではありません」
「……それでも、あそこに留めておくのはもう…」
何を言ってもお父さんの中で意思は決まってるって感じか。
「…分かりました。院長と話してみます。關燦病院での転院手続きはお済みですか?」
「すみません、よろしくお願いします。いえ、まだです」
「では、こちらから改めてご連絡させていただきますのでそれからお手続きをお願い致します」
◇
隔離病棟に入院する患者か…。
もっと大きな病院に行った方がいい治療を受けられると思うんだけど…。
「あ、もしもし〜飯窪です〜。桐生先生今お時間いいですか?」
「んーっとね、今運転してるからスピーカーにするね」
あぁ…隼人くん一緒に行ってるのね。仲良し夫婦め。
「あれっスピーカーってどうやるんだっけ?ここ?」
「押してみろ。変な顔をしている飯窪が映るぞ」
「あ〜それはいいやぁ。あ、これか。もしもし?飯窪先生喋ってみて?」
「はいはいどうせ顔も見たくない邪魔者ですよ。すいませんね出張デート中に電話なんかして」
「へへへっいじけてるよ。面白いね」
「そうだな」
「あのですね、転院希望の患者さんのお父様からお電話がありましてね。關燦病院の精神科に入院してるんですって。あそこって結構噂が絶えないじゃないですか。お父様も不安なんだそうで。こっちに転院させたいんだそうです。許可していいですか?」
「精神科?それならもっと他があるだろう」
ですよね、そう思いますよね。
「なんでも、隼人くんと桐生先生の例を人伝に聞いてうちを所望しているみたいなんです。こっちが何を言っても意思は固まってる感じでした」
「…そうか。ならすぐにでも手続きしてやるといい。關燦にいる時間は1分でも短くしたいだろう」
「分かりました。では、出張デート楽しんでください」
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