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正義感
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side ケント
約2年ぶりに聞いた魁の声。
間違いない。俺の知ってる魁の声。
だけど…………。
「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"」
手足、腹部を拘束されて大きく叫ぶ姿は、俺の知らない魁だった。
俺の知る魁は、優しくて温かくて、強い子だった。
俺は魁とそれなりに仲が良くてなんでも話してもらっていたから家庭の事情とかも、知ってる。
……お父さんが暴力を振るう人とか。
それが原因で離婚したとか。
母親同士仲が良くてよく遊んでたけど、魁の親が離婚してからはパッタリ。
それからだもんな。連絡取れなくなったの。
「あまり近付くな」
……………ひとりで辛かったな。ごめんな。
桐生先生の忠告を無視して近付いた。
ごめん。俺、知ってたのに。何もしてやれなかった。
「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"」
「ごめん…………」
「ぎゃあああああああ!!」
魁の手を握ったら、物凄く暴れた。
全身で拒絶されたみたいで胸が痛い。
でも……………。
「下がれ」
「魁、ごめん。ごめんな。お見舞いくるから。前みたいに話そう。なんでも聞くから、なんでも話して。そんで、昔みたいに俺ん家でホームパーティーしよう。たくさん友達呼んで、ワイワイ騒ごう!また来るから!」
「下がれ!」
「魁!!待ってろ!俺がお前を笑わせてやるから!今は辛くても、一緒に乗り越えて笑おう!!」
「ぎゃあああ!!!」
「ケント!!やべえって!めっちゃ怒ってる!」
桐生先生と雄大の制止を無視して必死で話しかけた。
怒ってるんじゃない。怒ってなんかない。
悲しいだけだ。今まで助けてやれなかった俺に、悲しんでるんだ。
「…取り乱してすみません。俺、隼人も救いたいけど、魁のことも救います。絶対に」
部屋を出て頭を下げた。
精神科っていまいち分かんねーけど。
2人とも笑った顔が一番似合うんだから、俺が笑わせるよ。
俺が、絶対に。
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