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side 飯窪
後日、合宿所からの通話でケントくんからある重大な話を聞かせてもらえた。
────…魁くんのお父さんのこと。
『あの日、伝えられなかった話があるんです。聞いてくれますか?』
俺が強制送還されたから話せなかったのだろう。
ケントくんから連絡が入った。
『魁のお父さん、どっか行っちゃったんですよね』
あー、そうだね。心の声聞こえちゃってたもんね。
知ってるよね。
「うん。本当は話しちゃいけなかったんだけど…つい…」
『いえ。その言葉で気付いたんです。魁かもしれないって』
「どういうこと?」
『あの人、昔から魁のことほったらかしで。出かけるって言って2,3日帰ってこないことがしょっちゅうあったんです』
「…………」
『離婚する前のことしか知らないけど…、魁のお母さん、すっごい働いてて、夜帰らないで職場で寝るとかも普通で。だから、魁はいつもひとりでご飯食べたり、朝起きて学校行ってって。してたんです』
『結構小さい頃から体弱くて、ひとりの時に体調崩しちゃったり、自分で救急車呼んだり』
『お母さんが稼いだお金を全部ギャンブルに溶かして借金まみれ。おかげで医療費どころか生活費、学費、全部払えないって、魁は当時笑ってました』
『だから高校では働くんだーって、言ってたんですけどね。その頃、魁のお母さんがお父さんに怒ったんです。頑張って反発したんです。稼いだお金使わないでって。そしたら、殴る蹴るの暴行で大問題』
『元々暴力の酷い人だったみたいですけどね。話を聞くことしかできなかった。あの日も。お母さんが殴られたー離婚だってーって笑う魁の話を、ただ聞くことしかできなかった』
『それからは、お金がないからって携帯取り上げられたのかな。一切連絡取れなくなっちゃって』
『俺ってほんと、どこにいても誰も助けられないダメな奴ですね』
…………。
「そんなことないけど。話してくれてありがとう」
そっか。
息子のために頑張って働いて入院費を稼ぐ立派なお父さんだと一瞬でも思ってしまった自分にむしゃくしゃする。
『魁は、すごく優しい子です。今は何も分からないかもしれないけど、今まで俺が助けられなかった分、助けに行きます。だから…その…』
なんとなくケントくんが言わんとしていることが分かる。
『入院費とか支払われないかもしれないけど…待っててもらえませんか…?
お父さんが払わないなら俺がどうにかしますんで。あいつは家族みたいな存在だし…すぐには、無理かもしれないけど…』
「…僕の独断では決められないけど。ケントくんの気持ちは分かった。桐生先生に伝えておきます。
ケントくんも、あの時自分がって責めすぎはダメだよ」
責任感が強いと鬱になりやすいからね。
君みたいな子は特に。
『飯窪先生も大変なのに自分勝手なお願いをしてすみません。…それと、隼人はどうですか?』
「隼人くんは…死にたいとは言わなくなったけど、まだ時間かかるかも。でもケントくんの言葉はきっと届いてる。ありがとう」
『隼人にも、何度も伝えにいきますので。2人とも俺が助けます。変化があったら連絡もらっていいですか?』
すごく責任感が強いね。
強すぎるくらいだよ。
そんなに背負わなくてもいいだろうに。
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