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人間不信
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side 隼人
キリちゃんが主治医になる前のことを全部思い出して憂鬱だった気持ちは少しずつ薄れていた。
村上先生は酷い人だったけどあれは俺自身にも原因があるからあの人や周りの大人が悪いんだと話すキリちゃんたちの意見を素直に聞くことができない。
だって、俺暴れてたし。八つ当たりしてたし。
「隼人、気分はどうだ」
俺は今、もう少し入院が必要だと診断されて精神科に入院している。
毎朝、毎晩、キリちゃんは部屋に来てそう聞くんだ。
「…どんな顔して生きたらいいか分からない」
いつもは大丈夫と答えるけれど。
気付いたら違うことを言ってしまっていた。
でも弁解はしない。キリちゃんに気持ちを隠したって、意味ないから。
「どんな顔って。お前を責める人間はいないんだから普通にしていればいい」
そうは言ってもさ。
「楽しい時は笑顔になって、つまらない冗談を言うのが隼人だろう。昔と今は違うんだ。過去は過去として受け止めて前を向けばいい」
………。
つまらない冗談って一言余計…。
「でも……」
「でもじゃない。今後「でも」と言う度に罰金制にしようか。昔がああだったから今こうしなきゃいけないなんてルール、俺は作った覚えないぞ。
患者は患者らしく主治医に従って前向きに生きろ。じゃないと」
「…じゃないと?」
「………俺から面会謝絶するからな」
………。
「やだ!その冗談つまんない」
「冗談じゃない。お前がうじうじするなら俺は会いにこない。退院したら飯窪の家に住まわせる。本気でな」
………………。
「でも…っ…」
「500円」
「はっ!?!?」
「でもは罰金と言っただろ」
なんで。いつも冗談なんか言わないのに、こんな時ばっかり。
でも、俺の心が回復してきてるのが分かってるからそうやって元気付けようとしてくれてるんだよね。
少し前の心が荒れてる時期にこんなこと言われたらわんわん泣くもん。
…大人だけど泣くもん。
「え?僕の家に住まわせる?はははっ、ないない!!」
朝の出来事を飯窪先生に愚痴ったら真っ向から否定されてしまった。
うんうん、こんな厄介者と一緒に住むなんてありえないよね、、分かってたけどなんか傷付く…。
「僕が良くても桐生先生が許すわけないじゃない。桐生先生もかわいいとこあるんだね、ははっ。面白い」
「え?」
「はやく一緒に家に帰りたいからそう言ったんだよ。うじうじしてないで帰るぞってこと!」
「…でも」
「朝霧先生が許可出さないと退院できないからもどかしいんだよ」
「そう…なのかな…」
「そうそう!!隼人くんを引き取りたいです〜なんて言ったら殺されちゃうよ!」
キリちゃんは優しいからそんなことしないけど…。
…飯窪先生の言うこと、ホントかなぁ。
一緒に住むの嫌じゃないかなぁ。
………。
「……飯窪先生」
「うん?」
「お腹空いた」
キリちゃんに言われたことはモヤッとしたけど
飯窪先生と話してたらなんかスッキリしてお腹空いちゃった。
でも晩ご飯食べたし。
「あれ?珍しいね」
一瞬驚いたけどすぐに柔らかく笑ってくれる。
「コンビニ行く?俺となら出歩いても問題ないよ」
キリちゃんは面会謝絶とか言って本当に来なかったからいいもん。
飯窪先生と行くもん。
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