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人間不信
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side 飯窪
「こんなに歩くの久しぶり。夜のお散歩って楽しいね」
まるでいたずらっ子のように微笑む隼人くんと並んで院内のコンビニを目指す。
精神科病棟から一般病棟に続く渡り廊下からの夜景が意外に綺麗。
すっかり元気になって桐生先生とジョークを言い合えるみたいで安心したよ。
元々の性格上少しネガティブではあるけど…。
…隼人くん、退院したらここには来れなくなるかもしれないんだよね〜。
ほら、超過保護な保護者がいるでしょ?
受付でバイトするの禁止とか。言いかねないよね。
「あっ」
「ん?」
コンビニを目の前にして隼人くんは突然止まった。
「…財布没収されてる」
あぁ。精神科ですもんね。
「退院許可がおりたら返してもらえるよ」
と、コンビニへ行こうとしても隼人くんは進まない。
「大丈夫大丈夫、中見られたりしないから」
「いや…何も買えないから…戻る」
あぁ。そっちか。
「ほら、行くよ」
でも、と続ける隼人くんを引っ張ってコンビニへ入ると何やら騒がしい。
「なんで来ちゃいけねーの?部屋に閉じこもってる方が害なんだけど」
「お前にはまだ早いと言ってるだろ。朝霧が不在だからって俺の目をかいくぐれると思うな」
か、魁くん…!?
やばい。隼人くんを連れ出さなきゃ………。
「キリちゃん…!!」
うわ…遅かった。
「は?隼人、お前もなんで…」
「…離せよっ!」
意識が復活した魁くんのお世話はすごく大変で、暴れたりはしないものの自分の状況を把握できてないのか度々部屋を出て医師を困らせている…。
今日は朝霧先生の代わりに付いていた桐生先生が振り回されているらしい…。
「キリちゃん!患者さんをいじめちゃだめだよ!!」
「は?いじめ?」
隼人くんがとっても元気になったと分かったと同時に笑いがこみ上げてきた。
「年下の男の子にムキになって恥ずかしいよ!!」
「おい、隼人。いつから俺にそんな…」
「そんなキリちゃんとはこっちから面会しゃじぇっ…しゃじ、お断りだからね!!!」
「ぶははっ…!!無理!!隼人くんごめん無理!!」
桐生先生に言われたことをそっくりそのまま返して仕返ししたかったんだろうけど、謝絶が言えないってどんなよ!!
「なんで笑うの!!?今すっごい大事なこと言ったのに!」
「……ほう。面会お断りか」
あーあー。桐生先生もお子ちゃまだなぁ。
「後悔しても知らないからな」
「…っ!!だ、誰が後悔なんて…」
「おい、戻るぞ」
お互い意地の張り合いですでに後悔してるだろうに桐生先生は魁くんを連れて、隼人くんは俺の手を引いて歩き出した。
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