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人間不信
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side 魁
「……なん…で…」
ノックの後に入ってきたのは想像すらしていなかった人だった。
「久しぶりだな。魁」
「なんで?なんでお前が…」
こいつは、……ケントは……。
俺の……………………。
「魁、会いたかった」
俺の、、親友だった。
家族みたいってケント入っていたけど、俺にとっては親友であり、兄ちゃんだった。
会いたかった。
俺だって、会いたかった。
「大きくなったなぁ!抜かされそうだ」
背比べをして爽やかに笑うケントはいつだって眩しい。
「ケント、なんでここにいるの?なんで?」
親父が教える訳ないし、どうやって俺がいるって知ったの?
「すらっと背が高い鉄メンタル先生分かる?」
「え?誰それ」
「ふふふ、飯窪先生のニックネーム」
「鉄メンタル…?あいつが?」
「俺の友達がそう呼んでるんだ。メンタル強いからって」
「へぇ。それで?そいつが?」
「飯窪先生がね、ポロッと魁って名前を出した時にピンときちゃって。会わせてくれって頼みこんだ!」
名前を聞いただけで…。
「え、でも、なんでケントと飯窪が?」
「俺、昔ここに入院してたんだよ。サッカーで足やっちゃって」
「え…?」
じゃあ、その傷。
「ちょっと縁があって最近よく来るんだ」
骨折した時に入院してた病院で顔を刺されたって聞いたことがある。
それって。
「ケントの顔に傷を作った奴がいたところ…?」
「あー、うん。そう。わざとじゃないんだけどね。俺の不注意でさ。まぁ本人にも事故だって伝えたし、俺の中でのこれは勇者の証だからなんともないよ」
『魁くんはね、隼人くんの腕を刺しちゃったの。でも覚えてないでしょ。だから事故ね。それで隼人くんも昔のこと思い出しちゃって、パニックになっちゃってるんだ。君たちは何も悪くないから』
それって。
「それってさ」
「うん?」
「あいつ、、あの、チビ…」
「チビ?」
「………隼人って名前だったりする…?」
「………」
そうなんだ。あいつなんだ。ケントの顔にこんなでっかい傷を付けたのは、あいつ。
だから俺にあんなこと…。
「たしかに隼人だけど、今となっては感謝してるんだよ。だから…」
「俺、なんも知らないで」
「うん、仕方ないよ。魁にも事情があるんだしさ」
「隼人ってどんな奴?いい奴?悪い奴?」
「んー、いい子だよ。俺はあんまり接点ないけど、当時同じ部屋に入院していた雄大っていう友達が話してくれる隼人は全然悪い人なんかじゃない」
「いい子…」
「話したことあると思うけど、親も兄弟もいなくて身寄りのない隼人を桐生先生が引き取ったって。隼人は元々心臓病の患者さんなんだけど精神科と行ったり来たりでなかなか治らなくてさ。それを18年かなんかで完治させたってニュースにもなってたんだよ」
聞いたことある…。
あいつのことだったんだ。
ニュースもなんとなく知ってるような…。親父が馬鹿にしてたっけ。
『こんな作り話で儲けようったって世間は甘くねぇよ〜』
本当だったんだ。
「え、じゃあさ。桐生は?あいつは悪い奴?」
「桐生先生?めちゃくちゃいい先生だよ。それこそ全く接点ないんだけど、患者さんのことをよく考えてくれているし、あたたかい人だなって思う」
…あんな目で俺を見たのに?
俺が隼人を傷付けたから…。
「…そう、なんだ」
「…で!魁は?今までどうしてた?親父さんは?」
直球だなぁ。いつもそうたけど。
「…關燦病院っていうとこにいてさ。でもあんまり記憶がないんだよね。親父は…多分逃げた。やっぱ病院って金かかるし。こんないい病院じゃ払えなくて当然。そろそろ追い出されっかな」
「桐生先生だから追い出すなんてことはしないだろうけど、あのクソ親父どうする?」
あくまで人の父親をクソ呼ばわりして、更に爽やかな笑顔で殺そうとするなよ…。
「どうするっつったって居場所分かんねーし。できれば関わりたくない」
「うん、わかった!じゃあ俺の弟になるってのはどう!?」
「……は?」
「前から言おうと思ってたんだ。でも言うタイミング逃しちゃってさ。俺はもう成人してるから養子とか大丈夫なわけ」
「大丈夫じゃないだろ」
「ん?大丈夫!」
ケントって多分天然なんだよな。
「で!退院したら俺と一緒に暮らそう!俺はほとんど家にいないから留守番頼んだ!」
「………」
「ん?どうした?」
「…ケントはなんで、俺にそこまでしてくれようとするの?」
「家族だから!」
何の影もないサッパリとしたケントの態度は眩しくて、目に沁みた。
「だからほら、これ」
はい、と渡されてのは没収されていた携帯とケントの名刺。
「消防士…?」
「おう!!」
「すげえ」
「ありがとう!」
じゃ!と言って帰ってしまったけれど…また会える…?
電話したら、話せる?ケントと?
俺の憧れの兄ちゃんと…。
思いもよらないサプライズに、ほろほろと涙が出てきた。
俺って泣けたんだ。
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