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翌日、客足が落ち着き
事務所への階段を登っている時だった。
たまたま通りかかった高校生のアルバイトが小声で何かを話しながら通り過ぎる。
…なんだ?
よく聞こえなかったが、それは誰かの事を心配しているような…戸惑っているような雰囲気で。
“いつもの比じゃない”だの“歩きかたが変”だの
到底理解するには難しすぎる内容だ。
多少疑問を抱きながらも、特に気にすることなく事務所の扉を開けたその時
俺が見たのは…。
「…な、つめ?」
「っ、料理長…はよ……ざ、ます…。」
21時少し前、夏目は制服に着替えている最中だった。
時間通りに用意をするアルバイトの、当たり前の光景。気になったのはそんな事ではない。
「どうした、その傷…。」
「……足を滑らせてしまって。」
大きなマスクでも隠し切れていない首まで伸びたガーゼ。
俺の入室に驚いて後ずさったらしい右脚は、重たそうに引き摺られる。
そしてシャツを羽織る間際、微かに見えた頸のあたりに
俺の見間違いでなければ…くっきりと爪か何か鋭いものを食い込ませたような痕が見えた。
…これはどう見ても、うっかり出来る傷ではない。
「夏目…お前もしかして昨日の彼にDVでも受けているんじゃないのか…?」
聞かずにはいられなかった。
仲良く並んで去って行く途中、俺は夏目の声を聞き逃さなかった。
風呂は予約してあると。
一緒に帰るとは、一緒に住んでいると言うことかもしれない。
どちらにせよ、昨日の夜から今日にかけて奴と一緒にいたという線が濃厚であり
夏目の怪我が増えているその理由として、1番疑い深い人物は“ナオ”と呼ばれていたあの男である。
「DV…?何言ってるんですか。」
夏目は、俺の心配をよそに
傷だらけの手でシャツのボタンを留め、冷たい視線を俺にぶつけた。
「いや…何でもない。
……今日はキッチンの仕事も挑戦してみないか?」
「でもッ。」
「いいから。」
さすがにこの酷い状態の夏目をホールに出し、接客させるわけにはいかない。
「…………はい。」
歩くだけで顔を顰める夏目に出来る、最善の提案だった。
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