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「昨日はどうだった?」
たまたま2人きりになったタイミングを見計らい
夏目に問う。
「え…。」
夏目は、それだけ言うと
何か悪い事をしたように、力無くうつむいた。
いつも猫背の夏目がさらに腰を曲げると、顔の周りに真っ青な渦巻きが見えるから困る。
「僕が悪いんです。
僕が、ナオを悲しませたから。」
器用に厚焼き卵をひっくり返した夏目の
僅かに聞こえる小さな掠れ声。
あの光景を見ただけでは、悲しんでいるなど微塵も感じなかったが
…見るに耐えない怪我は、ナオの仕業で間違いなさそうな口ぶりだ。
平気なフリがうまいのか、はたまた顔に出にくいだけで酷く酔っていたか…
だが、これがナオにつけられたものであるのなら、一緒に暮らしているぶん尚更
普段から、夏目は繰り返される暴力に怯えているのでは無いか。
「…夏目、俺は夏目の味方だから。
何かあればいつでも言ってくれ。」
「?…ありがとうございます。」
俺はこの時
世界には、様々な愛の形がある事を知らなかった。
ナオが嫌いだった。
俺なら、うまい飯を食わせてやれる。
そもそも女性と密着するような職種は選ばないだろうし…優しく、宝物のように夏目を大切にするのに。
夏目を諦める気持ちなど消え失せていた。
夏目を幸せに出来るのは自分だと、自惚れていた。
「今日はもう客もいないし、少し早いけど店仕舞いだ。」
インカムを通して皆に伝え、同じく厨房に居た従業員達はぞろぞろと事務所へ戻っていく。
夏目の着替え姿はあまり他人に見せたくなくて
最後まで厨房に残らせた。
「…あの、僕も上へ行ってもいいですか?」
「ダメだ。皆が帰るまでここに居なさい。
その傷を見られたら心配されるぞ。」
心配が半分と
邪な気持ちが半分。
「……そ、ですか。」
歯切れの悪い小さな声に
胸が痛む。
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