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嘘つきとは、どういう意味なんだ。
話の流れが見えない俺をよそに、夏目は涙を流して震え出す。
「ちが…違うよなお。これは」
「聞き、たく無いなぁ…言い訳なんてッ。」
ナオは怒鳴るわけでも暴れるわけでもなく
弱々しく息を溢すと踵を返して歩き出した。
「な……なお待って!!直己ッ直己ぃ!!!」
仕事終わりで酔っ払っているのか
まっすぐ歩くこともできず、ゆらゆらと左右に揺れていて。
人とぶつかっては転び、
罵声を浴びてもまるで何も聞こえていないかのように立ち上がる。
彼の名を呼び続ける夏目の声にも、
反応を見せることはない。
不気味さをも感じさせるナオの動きに鳥肌が立った。
そして、この世の終わりとでも言わんばかりに叫び続ける夏目の甲高い声にも。
何なんだ……こいつらは一体、なんなんだ。
「直己ッ!!そっちはダメ!!直己!!!」
「ぐっ……!」
夏目のかかとが俺のつま先に勢いよく落とされ、痛みの余り僅かに押さえつける力を弱めると
夏目は迷わず俺の腕を振り切って、ナオ目掛けて走り出す。
「待て夏目!」
俺には目もくれず、人を掻き分けて走りゆく夏目。
本当は心のどこかでナオに怯えているんじゃないのか。
これで、解放されるんじゃないのか。
なんで追いかける。
なんで逃れようとしない。
なんで、俺を選ばない。
俺は夏目を救えるのに。
「夏目!!」
小さな背中を追いかけた。
ナオに洗脳される夏目を救いたい一心だった。
俺のものにしたいなんて下心じゃなく、
このままナオの元へ戻ってしまえば、いつか夏目が死んでしまうんでは無いかと
怖くて仕方がなくて。
細い通りを抜ければ、大通りに出る。
そこは歓楽街ほど人通りは多くなく
代わりにたくさんの車が行き交う道路。
俺の横を通り過ぎるのは
夏目と、それからナオの方へと向かって走る一台の乗用車。
それが突然クラクションと、耳をつん裂くような急ブレーキの音を鳴らした。
「っ?!」
突然の出来事に、俺は驚きのあまり足を止める。
ちらほらと見える通行人は皆口を押さえ、動揺しきった有様で。
「直己いいいぃぃ!!!!」
夏目の悲痛な叫びと共に
聞いたことも無い鈍い音が
辺りに響き渡る。
ーー夏目が追いかけていたはずのナオの姿は
どこにも見えなかった。
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