アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
10
-
暴力、DV、怯え、絶望…
違う。
愛だ。
これまでの全てが愛だったのだ。
はじめから、俺が2人の間に入る余地などなかった。
付け入る隙など微塵もなかった。
それほどに、彼らは互いに依存し、歪んだ愛情で縛り、縛られていた。
これが彼らの普通であり、普通でなかった俺が招いた最悪の事態が…ナオの自殺。
世間の普通を押し付けた俺の
哀れで浅はかな、俺のせいで。
「なお…目開けてよ。
ねえ、なお。……僕のせいだって、いつもみたいに痛いことたくさんしてよ。でないと僕…生きてられないよ。
なお
ねぇ、なお……。」
ナオを抱きしめて泣き続ける夏目に
それ以上、俺が言葉をかけることはできなかった。
ーー遠くから、サイレンの音が聞こえる。
どうやら飛び出したナオを轢いてしまった運転手が
警察や、救急車に自ら通報したようだった。
だが俺にとって、それはなんの関係もないことだ。
俺は、夏目たちとはもう関わる事はできない。
親しいふりをして出しゃばる真似などできっこ無い。
俺の存在などまるで無いかのように
夏目はナオだけを見て、ナオの名だけを呼び続ける。
俺は、ただ一人
この緊迫した空気の中から逃げたのだった。
ただの失恋。
それ以外の何者でも無い。
俺の想いは夏目に伝えることも出来ず
夏目の恋人は勝手に車に突っ込んでいった。
俺のせいじゃ無い。
あいつらが異常なだけだ。
俺はなにも悪くない。
俺は…俺の普通を貫いただけだ。
これ以上、彼らを見ているのは俺までおかしくなりそうだ。
彼らのように狂いたくはない。
関わるのはやめよう。
この恋はもうやめだ。早く新しいものを探そう。
今度は……きっと、普通の。
「う、ぅぅっ……ひぐっ……。」
地下に降りても
車に乗っても
家についても
日が登っても
涙が枯れる事はなかった。
これがなにからくるものかはわからない。
好きな人を救いたかった。
救うのは自分でありたかった。
好かれるどころか嫌われて
救うどころか突き落とした。
目を閉じるとあの悲惨な光景が瞼に映る。
夏目の瞳は俺を恨み、愛する男を想って濡れて
俺を捕らえて言い放った。
俺の気持ちは、俺の想いは
夏目にとって、邪魔だったんだ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
10 / 13