アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
父と子の狭間
-
政宗様は父上がお好きだ。
腕のなかではおなごのように乱れるという。
いまは俺が小十郎を継いだが、からだは重ねてはいない。
そりゃあ俺は、きた様に共に育てられた訳でもねえし、右目をえぐってまでもお姿を整えたわけでも、死角を預けられたわけでもねえ。
けどさ……
白石の城も、今は俺のもんだ。
けど、政宗様は、父上んとこに忍ぶ。
母上は気にならんのですか?
母は艶(あで)やかに笑むのみ。
主君に身も心も捧げ尽くすのが武家の道。
前田様とか、井伊の若者とか、おまえも聞いておるでしょう。
世のならいにお詳しい母上だ。
ちょっとイラッとする。
俺はほしい。
信頼も。
愛欲も。
父のしなび魔羅よりは、俺の屹立を……
お慕いしております。
命がけでお伝えした想い。
政宗様は微笑まれただけだった。
おまえは大事。
小十郎んとこの長子だからな。
小十郎んとこの。
今は俺が小十郎なのですよ。
政宗様。
語を継がず、ただ酒(ささ)を注ぐ。
ぐいと呑み干す仕草にしびれる。
片恋。
いまなお政宗様のお心は、病み果て老いさらばえた父とともにある。
まだまだ戦は続くな。
はい。
苦労ばかりかけるな。
いえ。
そんな言葉はご止めくださいませ!
父にはおっしゃらないでしょう?
小十郎、行くぜ!
小十郎、任せたぜ!
言い切りで、返答さえ要らぬ。
俺の知らぬ時間がそこにはあり……
俺は一人杯を呷る。
父はもうすぐ逝く。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
1 / 1