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絶望は甘い罠5
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「…確かに、奴らは頭が悪い。だからと言って、殺しても良い理由にはならねぇ」
精霊は、解放しようとすれば、簡単に解放できる。
だが、精霊は知恵がない。
解放され、魂を磨き、やがて輪廻を廻ることで人の魂へと昇華するという知恵がない。
だから、精霊は一生人形のまま。
人間を羨み、そして人間になりたい思いだけが留まり、彷徨い続ける。
「だが、馬鹿となんちゃらは使いようって言うだろ?」
だから、知恵のあるものが命を有益に使ってやるんだと言っているように聞こえた。
ぎょろぎょろした目が当然の権利だと主張をしている。
「それにこれから戦いも多くなっていくしな。戦士は多い方がいい」
人間だけが特別に与えられたという何かを振りかざして、力任せに恣意を押し付けるのは、暴力となにが違うのだろう。
何かが優れているから上とか、何かに劣っているから下とか、優劣をつけて蔑んで、気持ち良くなっているだけの馬鹿には腹が立つ。
「お前名は?」
かつての死霊魔術師の大体は、背に棺を背負うと考えられていた。
使役する死霊を入れるための入れ物だ。
この世に止めた自らの死霊を棺に込めて持ち歩いていた。
それはとても古い死霊魔術師で、昔は多く見られていた典型的な姿だ。
棺を背負うことで、命を背負うのだという教えが、古い死霊魔術の教えにはあった。
だから命に対しての礼儀を徹底的に体に叩き込まれる。
少しでも外れようものなら容赦無くぶん殴られる。それだけ老師は厳しかった。
今の死霊魔術師は、背中に棺を背負いはしない。
それは命を軽んじているわけではない。
時代が変わり、風俗に変化が見られると、死霊魔術という学問への偏見がどんどん酷くなっていった。
わかりやすくいえば、死霊魔術師たちは命を狙われるようになったのだ。
棺を背負うということは、自らが死霊魔術師であることを主張して歩いているようなものだからだ。
死霊魔術師たちは、命を背負うことを誇りにさえ思っていた。
だが、そうすることで命を狙われるようになる時代がくると、彼らは棺を隠すようになった。
なぜなら、死霊魔術師達が絶えるということは、その学問や技術が途絶えてしまうことと同意だからだ。
それを恐れた彼らは棺をいろんな呪術や魔術を使って隠す。
死霊魔術師によって、その隠し方は様々。
彼が隠した先は指輪。
「オウ」
「オウ?」
男の眉間にまたシワがよる。
「お前…?」
男は、その行動を不審がったが一瞬遅く、彼は地面に中指にはめた指輪を突き立てた。
すると、指輪を中心にして地面に真っ黒な魔法陣が広がる。
魔法陣に巻き込まれた男は、身動きができないでいた。
「ま、まさ…かっ!?」
「…俺は、あんたに教えることはなんもねぇ」
ガラガラガラッ!
とものすごい音を立てて魔法陣の中から木製の棺を引き出す。
美しく微細な装飾が全面に彫刻され工芸品としても大変価値の高そうなものだ。
その上に立ったオウが、魔術師を見下ろす。
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