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絶望は甘い罠6
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「毘沙門様っ!どうかされたんですかっ!!?」
ものすごい音を聞きつけた男の部下と思われるものたちが、駆けつける。
「お前達っ!すぐ本部へ連絡をするんだっ!死霊魔術師だっ!」
棺の上に立っているオウの姿に辺りが驚く。
叫んだ毘沙門という男に部下達は慌てて集まり出した。
「あんたの浅い常識で、俺らのこと測ってんじゃねぇよ」
ゴン!
と靴底で棺を蹴ると、棺が音もなく開く。
棺の3つの蝶番は黄金で、金属にまでかなり細かな細工がされている。
そこには黄色のプルメリアに囲まれた人が目を閉じていた。
ふわりと甘い香りが鼻をかすめる。
「起きろ」
見惚れるほど端正な顔立ちをしている。
ゆっくりと、目を開ける。その瞳は碧眼で、まるで宝石のようだった。
髪は月面を映したかのような銀髪で、発光しているかのように滑らかで艶やか。真っ赤なリボンで緩めに束ねられている。
ゆっくりと棺の中から出てくる。
線は細いが、背は案外高いようだ。
「…」
碧眼の瞳の睫毛は長く、黙ってオウを見つめる。
その口が動くのを待っているのだ。
「食い散らかせ」
オウが命令すると棺から出てきたその人は悲しい表情をした。
「…もっと他に言い方ないの?」
その声は意外にも低かった。
見た目からすると、女性にも思える程美しく、大変繊細な顔立ちをしているのに、声は低く喉仏が上下している。
「うるせぇ、口答えすんな」
「…イエッサー」
悲しそうな表情をしてから2歩、3歩と歩を進める。
そして、ため息を1つしてから瞳を伏せる。
「ひっ…!?」
その瞳が再び強く前を見据えると、ため息が出るほど美しいと思っていた顔が、化け物と化す。
人間とは思えないほどの速さで、目の前をかすめると、次々人間を手にかけていく。
時折見せる鋭い牙と、荒れ狂うほどの鋭い爪は、まさに獣のようだった。
死んだことすら悟らせず、悲鳴を上げて逃げ惑う隙すら与えず、手にかけた毘沙門とその部下数人はあっという間にバラバラに引き裂かれて息絶えた。
オウは棺から降りた。
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