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絶望は甘い罠9※キスします
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「…なぁ、キスしたいねんけど」
「…」
オウは握り締めて汗ばんだ弟の頸椎をポケットにしまった。
そして、haldiの掌の指輪をとって彼の左手の薬指にはめる。
haldiの棺の呪術をかけてある指輪だ。
「ちょっ…んんんっ!?」
指の根本まで治るのが早いか、それとも唇を奪われるのが早いか、haldiのと重なる。
ギュッとオウを抱きしめて、体を密着させる。
「んっ、はっ…ぁんっ…!」
オウの口から甘い吐息が漏れる。逃げる隙を一寸も与えてくれない。
経験値的には断然haldiの方が上で、こういう時はすぐにオウは上せたようになってしまう。
「んっ、ふぁっ…!」
温度の違うhaldiの舌が激しく絡まり、オウの拙い舌を翻弄する。
口腔を激しく掻き乱されて、飲み込めなかった唾液が伝っていく。
「…ぁっん、はっ…」
haldiが唇を離すとオウの目は虚で潤んでいた。
頬は赤く、弱々しく震えている。
「…長げぇ」
オウは、乱暴に唇を拭って、文句を言うが、なんの効力もない。
逆にhaldiの凌辱心を煽っていることに気付いてすらない。
「ごめんて」
にっこりと満足そうに微笑んだhaldiにオウはいう。
「でも、涙止まって良かったわ」
haldiに揶揄される。
「…うるせぇ」
オウは視線を逸らした。
「オウの弟やから、なにがあっても大丈夫と思うで」
「…」
オウはhaldiの言葉に逸らしていた視線をあげた。
「?」
「…実は、あいつの想い人はお前の子供だぜ…?」
それでもお前は本当に大丈夫なのか?
と言われているような気がした。
事実を嫌悪したからと言って、どうなることでもないのはわかっている。
でも感情が全く動かないのなんて嘘だ。多少は動揺する。
「っえ…?」
haldiは絶望の最中多くの子孫を残した。
中には、彼の血を受け継いだ特殊な力を持つものもいた。
けれど、haldiは誰一人としてその子供を両腕で抱くことを許されなかった。
もちろん、顔を見たこともない。
「…」
オウはじっとhaldiを見つめた。
思い出したくもない過去を思い出して、感情がどう動くのかを観察されている。
「俺はオウがおれば、他はどうでもええよ」
ふっと表情を緩ませたhaldiはオウの髪を撫でた。
「…どうせ、誰との子供かなんて分からへんし」
その言葉は至極悲しい響きを持っていた。
「今となってはええ思い出やね」
自暴自棄とも違う、どこか穏やかな感情。
「…そうか」
オウはそれだけいうと頷いた。
本来なら、haldiへそんな事を確認する必要はない。
弟に会った話だけをすれば良い。
haldiを心配して、弟が思いを馳せる相手の話をしたのだ。
万が一にも、過去の自分を絶望に追い込んだ一族の全滅を望んでいるかもしれないと思ったのだろうか。
確かに、全く恨んでいないと言えば嘘になるが、今こうして目の前にオウがいて、彼がこうしてhaldiの心配をしてくれていることで、そんな憎しみなんてどうでもいいと思ってしまう。
「お前がいいなら、俺もそれでいい」
オウは、そういうとhaldiから視線を逸らして歩き出した。
「…」
彼が自分の心配をしてくれることを自覚して、幸福に浸ってしまう自分は安っぽいだろうか?
でも、オウなら決してそんなhaldiを笑ったりしない。
繊細なのに不器用なオウが堪らなく愛おしい。
その言葉が嬉しくてhaldiは背後からオウに抱きつく。
「重い」
覆いかぶさるようなhaldiにオウは文句を言う。
「なぁ、なぁ…今めっちゃエッチしたいねんけど」
まるで、昼寝を提案するかのようにそう言った。
「おめぇ、馬鹿か!こんなところでなに言ってんだ!」
オウはhaldiを引きずるように歩く。
足元に死体があることをわかっているのか…?
「だって…オウがめっちゃ好きやねん。しゃあないやんっ」
「場所をわきまえろ。あほ」
身長差のあるhaldiを歩きずらそうに引きずって歩く。
オウの口が悪いのは、その優しい心を隠すためだ。
共感力の強い彼の感性は、彼自身を苦しめることが多かった。
だから、微細な感情や当て付けのようにぶつけられる感情を拾わないために、オウの口調は荒いのだ。そうすれば他人からある程度の距離感はできる。
もっとうまく他人と距離を取る方法はあるだろうが、そんな方法しか選べなかった不器用さが可愛い。そんな彼が、haldiの前では弱々しく感情に咽ぶ。
彼を好きじゃない理由が見つからないとhaldiは思う。
「痛あっ!!なにすんねんっ!」
ドス!
とhaldiは思い切り横腹をどつかれる。
息が詰まり見つめた先に、黄色い頭の人形がいた。
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