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絶望は甘い罠10
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「…うっさいわ」
haldiが冷たく見下ろす。
「やめろ。喧嘩すんな」
オウがhaldiを言葉だけで制する。
「…奇遇やね。俺もお前のことめっちゃ嫌いや」
haldiは人形にそういう。
haldiは人形の言葉がわかる。
特にオウを巡っているときは尚更はっきりその言霊が聞こえる。
「あぁあっ!?何やねんっ!そのど頭、毟りとったろか!?」
綺麗な顔立ちをしているのに、言葉は実に品がない。
「…やめろって言ってんだろ」
じりじりとhaldiと人形は睨み合う。
いつもの嫉妬の応酬にオウは呆れる。
毎度顔を合わせては喧嘩をするのだ。
「あぁあっ!上等やないけぇ!かかってこいやぁっ!」
「…」
haldiは、オウから離れて人形と喧嘩をし始めた。
haldiの鋭い爪に引っ掻かれたフェルトが解れて宙を舞う。
だが人形も黙っておらず、haldiに襲いかかる。
「なにしくさんねんっ!この餓鬼あっ!」
haldiの品のない怒号は、語尾が裏返っていた。
「はぁ」
オウは道端の木の根本に腰掛けて2人の喧嘩を傍観することにした。
興奮した2人は何を言っても無駄だ。気の済むまで殴り合わせるしかない。
オウが使役しているもの同士なので、強さはオウが一番よく知っている。
「…もう面倒臭せぇ」
かつて、老師は言った。
死霊魔術師としてどうあるべきかは、
自らで答えを一生かけて見つけなければならない。
けれど、決して闇に目を閉じるような事をしてはいけない。
日の当たる、空の下で探さなければならない。
地に足をつけ、空を見上げたら、きっと虹の美しさに思い出すかもしれない。
仮に、もし虹の先に自らの答えを見つけたとして。
自らの色だけは決して見失ってはいけない。
それを人は『希望』と呼ぶのかもしれない。
と、老師は言っていた。
オウは、同じ老師から教えを仰いで3番目に死霊魔術師になった。
もらった色は『黄』
「あー…終わったら起こして」
オウは横になった。
2つの平和な黄色い怒号を遠くで子守唄のように聴きながら、オウは重くなる目蓋を閉じた。
ー終ー
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