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序、
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「約束だ。必ず乗り越えて、幸せになろう…セン。」
「あぁ…絶対だ、寅松。」
俺達は生まれ育った小さな村を離れ
男同士の婚姻を認められる唯一の町…都へと逃げた。
幼馴染みで恋人の寅松は、容姿こそ中性的だがその性格はいつも前向きで男らしく
冴えない俺を誰よりも深く愛してくれる、唯一無二の存在。
しかし、親は俺達の関係を良しとせず
やれ見合いだの、やれ子作りだのとそればかり。
煩わしく、堅苦しい村の縛りに耐えかねた末
まだ夜も明けきらぬ薄闇の中、息を潜めて生まれ育ったこの家を抜け出したのだった。
家族と離れるには相当な勇気と覚悟が必要だ。
ともすれば、縁を切られかねない身勝手な行動に怖気づき、涙ぐむ俺を
「大丈夫。いつか俺たちの努力を認めてもらえる日がきっと来る。」
そう言って、小刻みに震える冷たい手で
肩を抱いてくれた。
前を向いたまま
拭う事もせず、漆黒の瞳を潤して。
…それが、寅松の涙を見た最後であった。
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