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うざい。だるい。
てるてる坊主は鮮烈過ぎた。6月1日を『てるてるショック』としよう。どんなプロセスを経て嫌いになったのか後世に語り継げる。
出会ってから一時間も経っていないのに、たった数回の応酬だけなのに、俺の中での位置づけが固まった。どのへんがどのように嫌いなのか説明すると長くなるが、端的に言えばどんな物事にも張り切って取り組みそうなところが癪に触ったのだと思う。ハロウィンのような輸入してきた催し事が好きそう。
「ハロウィン? それも好きだけどイースターのほうが好きかな」
イースターって何。
好きという感情は冷めるのも崩れるのも容易いのに、嫌いというネガティブなイメージは一度定着するとなかなか消えるものではない。
歩はまさにその典型だった。第一印象の『俺とは真逆のタイプ』はすぐに『苦手』『嫌い』に早変わりし尾を引く。歩を中心にクラスメイトが集まる光景は、まるで排水口で渦巻く汚水のよう。次々と面識を増やしていく様は、まるで流行病のよう。いずれも悪い印象しか残さない。
別に歩の粗を探したくて躍起になって観察していたわけではない。席が前後なので嫌でも彼とクラスメイトたちの交流が見せつけられるのだ。卵焼きは甘いのと塩っぱいのとどっちが好きかなんて情報、どうでもいいんだよ。
宇佐美がいつものように前のドアから入ってくるのが見えて今が昼休みだと気づく。一直線にこっちへ向かってくる姿にため息が出た。
「なぁ宇佐美、俺さーー」
「後ろの子が転校生だろ」
安堵したのも束の間。俺は気づいたのだ、宇佐美の視線が俺の後ろへ向かっていることを。
そうだった、背後にはやつが控えているんだった。そして宇佐美はそれを見に来たんだった。
あまり両者を関わらせたくないーーでもそんな逡巡はおくびにも出してはならず、体の向きを変えた。
「そう。歩っていうの」
「よろしく。ええっと……」
「あ、俺? 俺は宇佐美な」
「宇佐美。宇佐美かぁ……うさ……よし。ウサミンでいこう!」
「え、なになに?」
頭に?が浮かんでいる宇佐美に助け舟を出してやる。
「あーー。良かったね宇佐美。それお前のあだ名だよ」
「ウサミンって結構いいでしょ。うさぎみたいで可愛くて」
歩はというと、してやったりの笑顔である。
「……まあ、確かに語呂も悪くないし」
宇佐美はというと、この返答である。満更でもないのだろう。俺は心に決めた。絶対にウサミンと呼ばない。なんならたぬきちと呼ばれた日には無視してやる。
それにしてもこの事態は芳しくない。歩が宇佐美にとって好感触になる必要はないのだ。
「ご飯の前に俺トイレ行こうっと」
苦肉の策だが仕方あるまい。二人を分断させる。連れションを促すと宇佐美は必ず乗るはずなのだ。
「あ、俺も」ほらな。
「じゃあ僕もー」
お前は来るな。そこで惨めに漏らせ。どうせ尿意なんてないくせに。
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