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小石と耳飾り5
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「ダイン様は覚えていらっしゃらないかもしれませんが、まだ子供の頃にお会いしたことがあるんです。その時、ダイン様の笑顔に救われました」
ランスはサラリとした金髪を耳に掛け、耳飾りを見せた。
「顔は見えなくてもピアスは見えますか?これ、僕が差し上げた河原の石の代わりにくださいました。……ずっと宝物です」
ランスの声がふわりと温かみを帯びて、耳飾りを見たダインは、その話が微かに甦った。
ジェリドのような金髪の子供と寒い雪の日に石拾いをした。その時の黄色い石と金の耳飾りを交換した。
その後、石を城の宝石職人に加工を手伝ってもらい、ブレスレットにしてジェリドに贈った記憶が鮮明に思い出された。
嬉しそうな、記憶の中の彼の笑顔が心を揺さぶる。
ダインの青い瞳から涙が零れ落ちた。
愛しい、大切な彼の笑顔が頭から離れない。
「……すまない……そうか。あの時の子供はランスだったのか。あの石は綺麗だった。ジェリドに贈ったんだ」
すごく喜んでくれたよ。と目蓋を閉じたダインに、ランスはハンカチを差し出した。
「それはよかったです。ダイン様は一度に二人に宝物を贈ったんですね。さすがです」
優しい、ランスの思いやりにダインは微かに口元を緩め、ハンカチを受け取った。
「ありがとう……」
「今度、雪が溶け始めたらダイン様の為に石探しに行きましょう。子供の頃よりきっと良い石がたくさん見つけられます!」
ランスの明るい声が部屋に響いた。
彼が、ジェリドへの想いを大切にするように、自分もその人を大切に思いたい。少しでも、心を許せる存在になれたら……。
実らぬ恋と分かっていながら、それを大切にする者同士、きっとそばにいられる。
ランスはいつかダインが人の顔を見られるようになった時、笑顔を見て欲しいと告げた。
「楽しい事、たくさん探して来ます」
「……俺は、そんな資格あるのだろうか……」
「あるに決まってます!ジェリド様にも報告してあげましょう」
恐ろしいほど前向きな言葉に、ダインは城から少し遠いジェリドの墓を思い浮かべた。ずっと、行くことが出来ていない。怖い場所だ。
だが、ランスとなら行ける気がする。不思議な繋がりを持つ、少年。
ダインは表情こそ変わらぬものの、ランスの金髪を撫でた。
「よろしく頼むよ」
はい!と明るく返事をするランス。笑顔である事が顔の見えないダインにも伝わり、心がふわりとした。
月が少し傾いて、部屋に光が差し込む。微かに伸びる影が二人の距離を近づけたように見せる。
実際、部屋の雰囲気が暖かくなるように、確かに二人の距離が近くなるのをお互いに感じていた。
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