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……ん。
遠くで誰かの声がする。
「…………。……」
「…。………。………?」
ん、…ん。
薄ぼんやりと目を開けると、視界が上手く定まらない。
「いっ…」
ツキッとした頭痛がこめかみを襲った。目をつぶり一呼吸置くと、鼻を掠めたのは薬品の香りで
目をこすって周りを見ると、オレは保健室のベッドに寝ていた。
え、オレ…
プールにいたんだけど。
わけがわからず天井を見上げる。
冴えない頭をフル回転させても、どうしてオレがここにいるのか、よくわからなかった。
その時、ベッド脇のカーテンがシャッと静かに開いた。
「カズ。起きた?」
「駿くん。オレ…」
学ランに身を包んだ駿くんが
ベッドの横に近づいて来る。
起き上がってみると、
オレの上半身は裸だった。
腰周りにはらりと落ちたオレのバスタオル。思わず、布団を首元まで引っ張りあげる。
そんな恥ずかしがる必要ないのに。
場所がら、ベッドの上で裸ってのが、
なんか…さ…。
駿くんはそんな事を気にも止めず、
オレの隣のベッドに『よっ』と腰掛けた。
オレ、何1人で恥ずかしがってんだか。
「成長期の貧血だってよ。お前、めまいで倒れたんだぞ。覚えてるか?」
「全然…。それで、オレはどうやってここに?」
確か、プールにいた時は真田先輩が後ろにいたはず。
「オレが運んだよ、ここに。……悪かったか。」
「え?いや。…ありがと。」
駿くん、あの時は
どこにいたっけ…
確かプールサイドのわきに立ってて、オレからなんて距離があったはずなんだけど。
「これ、カズの着替えとカバン。早く着替えろよ。帰るぞ。」
苛立った声。
長い足を組んで後ろ手にベッドに座る駿くんは、どこか怒ってるようで少し怖い。
顎先で示された所を見ると、駿くんの横にはオレのカバンと綺麗に畳まれた学ランが置いてあった。
でも待って。
今はまだ、部活の時間があるのに。
「駿くん。練習は?まだメニュー残ってるんじゃ…」
「無しだ。お前を家に送れって。相田先生が。」
「え?ほんと?」
「ああ。だから、さっさと着替えろよ。」
なんか、悪い気がした。
駿くんは練習したいだろうに、オレの家が隣りだからって、途中で止めさせられて。
せめて、早く帰ろう。
これ以上気まずくなるのは、避けたい。
駿くんがスマホをいじってる間に一目散で着替えた。でも、上手くボタンが締まらなくてアタフタしてると、駿くんが立ち上がって無言で手伝ってくれた。
「ごめん。…ありがとね。」
「…別に。」
見上げると、久しぶりに近くで見た駿くんはやっぱり美形で、オレの目の高さにある口元のホクロが目に止まった。そしてまた駿くんの目を見ると、黒曜石みたいに綺麗で、つい見入ってしまう。
駿くんもオレのことをジッと見つめてて、こうやって視線が合うのなんて、なんかすごい久しぶり。
そんなことを考えてたからか、ずいぶん長い間見つめてしまって、駿くんから先にフイと視線を外された。
ツキっと傷んだのは頭ではなく胸の方で、なんでか少しだけ苦しい。
てかここさ、ベッドがあるし
駿くんがいつもよりそばに居るしで
ちょっと落ち着かない。
こんなこと思うなんて
オレ、変なのかな…。
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