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夢Ⅲ
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『あははっ、お前その格好はおかしいって!あはははっ』
「な、そんな笑うなよ!仕方ないだろ、クラスの女子がこれ着ろってうるさいから…」
うるさ、、ここは………?どこ?
教室……?
あれ……?さっきまで椎名さんと居たのに…。
店が閉店して、お腹すいたから椎名さんの作業終わるまで椎名さんの家に…あれ?
いつの間にか景色は変わって、少し散らかった教室に俺はいた。
机と椅子は全部端に寄せられて、床にペンキやらダンボールが散らばっている。でも、その床に触れることはなく、俺はふわふわと浮いた感覚でその空間に包まれていた。
『大丈夫、大丈夫。なんか、似合ってるから』
「バカにしてんだろ!顔が笑ってんだよ!」
そんな俺の鼓膜を劈くように誰かの声が響いた。
ぱっと振り向くと、高校生くらいの男子2人がそこにはいた。1人は何故かメイドのコスプレをしていて、もう1人はそのコスプレを見て心底楽しんでるようだった。
俺が感じる時間と2人がいる空間の時間がどこが違うような気がして、違和感を覚える。
夢……?
なんだ、また変な夢見てるのか?
俺が見たい夢はこんなのじゃないのに。
はやく目覚めて、こんな夢なんて『笑ってないって!も〜、ちゃんと似合ってるよ蒼李』
突然、俺の名前が呼ばれて思考が停止する。
いま、なんて言ったんだ?
蒼李?蒼李?っていったのか?
『蒼李が気にするほどじゃないから』
やっぱり!!!
疑問が確信に変わり、ばっとその声の主を見ると、声の主は目の前にいるメイド服の男の子に語りかけていた。
俺からの視点じゃ、メイドの子が上手く被さってて見えないが、ザ・運動部って感じで栗色の綺麗な髪を持っている。
「てかもう見ただろ!もう着替える!!」
『あ、ちょっと待ってって!!写真くらい取らせろ!!』
もし、これが俺が探している過去ならば。
「やーだってば!ちょ、その手離せ!!」
『んっへへ、蒼李GET!』
もし、メイド服の男の子が俺ならば。
いや、それは嫌だけども。でももしこんな醜態晒すような過去があったなら。
膨らむ可能性に堪えきれず、俺はその男の子達に近づこうとした。
が。
体はふわふわと浮くばかりで、1歩もその子らに近づけない。
その子らは俺のことなど見えてないのだろう。次から次へと言葉を交わし、怒ったり、笑ったり、とても楽しそうな空気で包まれていた。
なんで……?
過去の俺はなんでそんなに笑えてるんだよ。
俺を何がこうさせたの……?
本当の俺はどれ……?
あぁ、もう少しなのに。
椎名さんに拾われてから自分に問い続けてきた疑問が、もう少しで、解決しそうなのに。
もう少しで、2人の顔が見れるのに、
なんで動かないんだよ。
動け、
動け動け動け!!!
もがけばもがくほど、離れていくような感覚がして俺はひたすらに手を伸ばす。
でも、それでも届かなくて。
俺の気持ちがどんどん空回りしていく。
夢だから、過去じゃないかもしれない。
なのに必死になるのは。
なのに届かないとわかっていてもがいているのは。
俺が知らない過去に縛られていることを証明するには十分だった。
あぁ、あとちょっとが、もうこんなにも遠い。
いつの間にか2人は、俺の伸ばす手のひらに収まるほどまでに小さくなっていた。
それと同時に体もどんどん重くなっていく。
ふわふわとした感覚が無くなって、現実味を帯びた感覚が身体中から伝わる。
そう、これは過去の記憶が夢になる時。
そして俺はまた、最悪の朝を迎えた。
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