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prologue プロポーズ
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僕は、時々夢をみる。
その夢を見るのはいつも、突然だ。
今日も、寝室のベッドに入った途端、聞こえてきたのは兄ちゃんの声と幼い僕の姿。
*
「ねぇ、いきなりようじってなぁに?」
まだ、用事の意味すら曖昧でよく分かっていない僕が相手の男の子に向かって問いかけている。
シロツメクサが一面に咲き乱れている、そんな野原のど真ん中で。僕ら2人は向き合って立っていた。
それが、すごく綺麗で素敵だと思うのに。
今の僕には、触ることすら出来ない。
『和希……俺、好きなんだ』
お前のこと、好きなんだ。
そう顔を真っ赤にして言われた。
そして、大きくなったら、結婚して欲しい、とも
「ほんとう……?」
僕は、きっと驚き過ぎて口を開けたまま突っ立っているという間抜けな顔になっていたと思う。
「本当だよ、かず……」
だけど、2人の中でそんな事はもはや、気にするような内容ではなくなっていた。
「うん、ありがとう!」
いつものように、笑って言うけれど。
この左胸だけじゃなくて、体全体に広がるモヤモヤはなんなんだろう?
今までの、兄ちゃんを好きとは何かが違う気がした。
僕が、彼に笑いかけると。
兄ちゃんも、すごく幸せそうな顔をしてた。
それで、よかった。
それだけで、よかったんだよ。
『嬉しい、絶対ね。約束』
『うん、約束だよ!!』
幼い頃によくある、軽い口約束。
結婚がそんなに大事なものであるとも知らずに、
僕らはまだ細い指と指を絡めた。
この日、彼はシロツメクサで作った指輪を作ってくれたっけ。
兄ちゃんと呼んだあの子が、僕に、指輪を嵌めてくれて。僕も彼の指に指輪を嵌めた。
『これで一緒だよ』
『いっしょ?ずっと?』
『うん、一緒だよ』
そう言って兄ちゃんが笑った。
釣られて僕も笑う。
『また、遊んでくれる?』
『うん!ぜったいあそぶよ』
僕が、大きく首を振りながら言うと、兄ちゃんはありがとうと言いながら僕を抱きしめた。
あたたかくて、兄ちゃんの匂いがした。
僕は、ただその温もりに埋もれていた。
でもなぜか、その温もりがやけに心地よくて……
あたたかくって……涙が出そうで。それが、何故かなんて当時の僕にはわからなかった。
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