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epsode6 駿の部屋
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コンコン
拳で、木目調の扉を2回叩く。
すると、部屋の扉が空いて、駿兄が顔を出した。
「珍しいね、どうしたの?」
彼は、朗らかな笑みを浮かべながら言った。
その雰囲気は、昔と変わらない。
「ちょっと、ね」
そう言いながら、部屋の床に座る。
椅子に座ってパソコンを弄っている駿兄に遠慮して、窓側に小さくなって座った。
「もう少しで終わるから、待ってて」
その様子に気づいたのか、駿兄はそう言ってくれる。僕は、小さく頷くと、そのまま暇つぶしにスマホゲームを開いた。
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「和希、終わった」
スマホゲームに夢中になっていたせいか、気がつかなかった。何度か、肩を叩かれて、ようやく我に帰る。
目の前には、駿兄の顔。
相変わらず、かっこいいな。
あ……れ?
僕、今何考えて……
「おーい、和希?」
駿兄は、僕がボーッとしているのを見て、まだ気づいてないとでも思っているのか、僕の顔の前で右の手の掌をヒラヒラとやっている。
「うわっ、ビックリした!!」
「えっ、そんなに驚くことか?」
「うん、ビックリした……」
僕がそう言うと、駿兄はごめん、と素直に謝る。
別に謝ることじゃないのに、そう言うと。でも、ビックリさせちゃたからと駿兄は言う。
昔から驚くほど素直で、真っ直ぐなところ全然変わってないな。
「昔からさ、変わんないね……和希は」
そう思っていた矢先、駿兄にも同じことを言われて驚いた。
「えっ、そう?」
「うん、昔からさ、心配な事あると、俺の部屋来るでしょ?」
あまりに図星で押し黙った。
なんで……気づいてた?
「まぁ、いいや」
で、今日はどうしたの?と言われる。
でもまさか、梓さんにあんなこと言われた……なんて言えるはずもなく。
「いや、さ。僕、すごい優柔不断じゃん?」
「それで、怒られちゃって」
結局、濁して言うことにした。
「そっかー」
手を顎へ持っていき、考え込むような仕草をしたあと、駿兄は僕を見て口を開いた。
「でもさ、それってすごいよく物事を考えられてるってことだよね?」
「えっ……まぁ」
そんな事を言われるとは思わず驚く。
てっきり、優柔不断という意見に同意して、そうだと頷くとばかり思っていたから。
「それって、悪いことじゃないんじゃない?」
僕を覗き込むようにして、駿兄は言う。
「そっかぁ……」
そんなふうに思ったことは無かった。
僕はいつも、優柔不断で、頼りない。
自分の短所、としてなら自覚していたけれど。
「ありがとう、駿兄」
「よかった」
そう言って、駿兄はいつもより、優しく笑った。
「あ、でも和希が後悔しないように、ね」
「わかった、ありがとう」
僕は、彼にはにかむと、部屋を出ようとした。
それを、駿兄が呼び止める。
「ちょっと待ってて」
そういうと、駿兄はそう言って何処かへ行ってしまう。そして、戻ってきた彼の掌には……
「指……輪……?」
「そうそう。こないだ言ったお祭りで当たったんだ。」
流石に、俺はもうこれをするような歳でもないし。和希が持っててくれたらなって。
「いや、でも……俺だって」
そう言いながら、思い出す。
最近よく見る夢、のこと。
もしかしたら、何か思い出せるかもしれない。
「そうだよなぁ、ごめん」
そう言って、しまおうとする駿の手を制す。
「和希……?」
「駿兄…やっぱ、ちょうだい」
無意識に手が震える。
それを、もう片方の手でぎゅっ、と掴んだ。
「うん、わかった」
手に、駿兄の手が重なって。
指輪が僕の指に、嵌っていく。
その瞬間、僕の頭の中のあの映像と重なって。
パチン、という音とともに映像は消えた。
「この指輪、お守りみたいな感じで、持ってて貰えたらなぁって……思って…って和希?」
「うそ……だ」
「えっ……なに?」
駿兄は聞こえていないみたいで、聞き返した。
僕はその声を無視して、部屋を出て、自分の部屋へと走った。
バタン
扉を閉めると、ようやく肩の力が抜ける。
「駿……兄……?」
あの男の子に、ピッタリ重なったのは。
目の前にいる、他でもない彼でした。
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