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“普通”
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「そうですか」
「はい。そういう事で、僕は帰ります」
近くに置いてあった自分の鞄を手に取り、ベットから立ち上がる。
「俺、本気ですよ」
「あー、そうですか」
「三好先生の普通は普通じゃない」
「じゃあ……何が普通なんですか?どこの誰を基準に“普通が作られるんです?」
立ち上がったまま、千葉先生に背中を向けたまま答えた。
“普通”や“あたりまえ”なんて言葉、誰が作ったんだ。どこが基準なんだ。“あたりまえ”ができない人は普通じゃないのか。そうなこと言ったら、世の中が“普通”じゃない時はどうするんだ。
そんな時も全てが“あたりまえ”になるのか。
千葉先生の家から出て、鞄から携帯を取り出す。
『連絡は途絶えないように、常に連絡をすること』
そう、宙にいから言われて、持たせられた携帯電話。
もはやメールの相手も電話の相手も宙にいだけだ。こまめに連絡を取り合うという約束通り、授業中以外はメールは5分から10分以内に返さなければ宙にいの機嫌を損ねた。
電源を入れるとかなり着信が溜まっていた。
今日の、午後になってからの電話が合計23件。留守番電話へのメッセージも17件入っている。メールもかなり来ていた。
このまま今すぐまっすぐ家に帰ったとしても明日まで僕は無事でいられるのか……。いや、もう日付が越えている。今日か。
とりあえず、今回の事は何を言ってもただでは済まされないことは確定だ。
電車は終電はとっくに出ている。タクシーもここら辺には見当たらない。僕の車も今頃学校にあるだろうし……かと言って学校はもう閉まっているに違いない。
「歩く……か」
帰りたいのか帰りたくないのか、よく分からない複雑な気分。
足早に、自分の家に向かって歩き始めた。
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