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「ん……んん゛」
寝苦しい…
目を開ければ見慣れた天井。
嗚呼…俺は気を失って…
ふ、と横に顔をやると、そこにはクウガが居た。
「うわっ…!」
あまりにも至近距離過ぎて、俺は飛び起きた。
なんでここで寝てるんだコイツ…
寝苦しい理由は…嗚呼、この手か。
俺を抱き締めるようにしてたのか、力無く俺の上に投げ出されたクウガの腕がそこにはあった。
枕も固いと思えば、それもこいつの腕で…
「はぁ……」
俺には布団を掛けた癖に、自分はお構いなしか…
何か掛けるものは……と思いながら布団から出ようと藻掻く。
『………。』
が、それはクウガの手によって叶わなかった。
まるで行くなと言われているかの様に、強く腕を掴まれた…
「布団取ってくるだけだから…離せ…」
『んん……』
そう優しく言うと、クウガの手は離れた。
心配性なのか、それとも拾った責任感からか…
こいつの行動はいつも俺を守る事ばかりで、副将軍兼将軍護衛の俺の身にもなって欲しいくらいだ。
「ありがとう…いつも…」
『そーいうのは俺が起きてから言ってくれ。』
「な…っ!」
2つの鋭い瞳がゆっくりと開いた。
「お前…っ…起きてたんなら」
『今起きたんだよ。』
「〜〜っ…」
『で?いつも何だって?』
「う、うるさい!さっさと部屋に戻れ!」
『いやいや、俺は布団掛けてくれようとするお前の優しさに…あ。』
「最初から起きてたんじゃないか!!」
クウガの頭を思い切り叩く。
良い音が鳴った…が、当の本人は何処か嬉しそうで気持ち悪い。
『体調は大丈夫か?』
「平気だ。」
『そうか、それなら良かった。』
「………迷惑かけてすまなかった。」
『別に、これくらい何ともねぇよ。』
「………。」
こいつは優しい…優しすぎる。
たまにその優しさが苦しい…
朝の稽古を終えた後、俺は薬師のユリさんを探し回った。
クウガや他の傭兵達に息抜きをして来いと促された…と言うか上司命令を下された。
渋々ではあるが…それを了承し、本日商人の所へ行くというユリさんの護衛も兼ねて付いていくことにした。
「居ないな…もう出たのかも……あ。」
前方に、白いウェーブ掛かった髪が角を曲がっていくのが見えた。
「ユリさん!」
〔あら、セン副将軍。如何なさいました?〕
「今から商人の所へ行くんでしたよね?」
〔えぇ、そうですけど…〕
「俺も行きます。」
〔良いのですか?〕
「勿論です、それに…息抜きをして来いと命じられまして…」
〔ふふふっ…そういう事でしたら、参りましょうか。〕
優しく微笑むユリさん…
この方はいつも深入りはせずに、了承してくれる。
俺がここに来てから、幾度か怪我を治してもらったこともあった…
その時も特に何も聞かず…男の子らしくて良いわ、と微笑んでくれた。
〔裏山に商人が来るのだけれど…せっかくなので街に出ましょうか。〕
「え!良いんですか?」
〔えぇ、あまり街には行かれないのでしょ?〕
「まぁ…」
〔明日の部族会議にお出しするお茶菓子も、買いたいですし。〕
「分かりました。あ、その籠お持ちします。」
〔ありがとう。〕
他愛の無い会話をしながら、街へ出た。
皆が笑顔で活気がある…
初めて来た訳では無いが、こうしてゆっくりと物色出来るのは嬉しい。
〔少しあちらの方見てきます、貴方も気になる物があったら私にお構い無くじっくりご覧になって下さいね。〕
「はい…では、近くに居るので何かあったらお知らせ下さい。」
〔ふふ、えぇ分かったわ。〕
「…何か変ですか?」
〔いいえ?ただ…いつもより楽しそうで、私まで嬉しくって。〕
「……。」
なんだか恥ずかしい…
頬を掻きながら、ユリさんが商人のところへ行くのを見届ける。
さて、何か良いものはないか…と、ぐるりと見渡す。
{お兄さん、李国の将軍さんかい?}
「まぁ…そんなところです。」
{この武器なんかどうだい?}
「これは…大刀ですね……しかも中々の上物。」
{流石!これはうちの目玉商品さ!}
「へぇ…」
黒曜石でも使われているのか…光を反射させ、鋭さが見てわかる。
柄の部分には龍が施されており、大きく口を開けている…
ふ、とクウガに似合うのではと思ってしまった。
「アイツの大刀…ボロボロだしな…」
幾度と戦で使用した彼の愛刀。
急に新しくなっても、使い古されている物の方が手に馴染むとも言う…買い与えても使ってもらえるかどうか…
「うーん…」
{買うかい?}
「いや…うぅん……」
{オマケに飴も付くよ〜?}
「飴…」
オマケだとしても、少し気になる。
いや…傭兵達にあげるために…決して俺が食べたいからでは…
〔あら?立派な大刀ではありませんか。〕
「ゔっ……ま、まぁ、少し惹かれて…」
〔…貴方は確か、双刀でしたよね?大刀なんて……あぁ、なるほど…ふふふっ〕
どうやらユリさんにはお見通しらしい…
誤魔化す様にして、俺はオマケの飴を口の中に放り込んだ。
甘い…けれど、後味が何か変だ。
こういうものなのかもしれない…
「あ、ユリさん…飴食べます?」
〔あら…良いんですか?〕
「勿論です、オマケに付いて来た代物ですけど…」
〔では、お言葉に甘え、て………っ!〕
「如何しました?」
雨の包みを取った瞬間、ユリさんの表情が強張った。
何かあったのかと思い、顔を覗き込む。
〔セン様、こ、これ…お食べになりました?〕
「え、あ…はい、甘いんですけど…何か後味が変で…」
〔直ぐに吐き出してください!!〕
「えっ…」
怒鳴る様に叫んだユリさん…あまりにも切羽詰まった表情を向けられ、俺は大人しく飴を吐き出した。
あれ…?
包みを取った時は白かった筈の飴が……赤い。
〔直ぐに水をお持ちします!ここにお座りになって!〕
「は、はい……」
〔これは…痺れ薬を練り混んだものです。〕
「し、びれ…?」
〔少量でもかなりの効果があります、薬師の間では暗器として持ち寄られてる程です。〕
途端に指先が痺れ始めた。
頭もなんか霞がかってきた…
「す、みまへん…おれ…」
〔今水をお持ちします!〕
「う……」
走り去って行くユリさんを、目で追いながら…手元にある大刀を握り締めた。
浮かれていた…だからこんな事に…っ!
〔セン様!!〕
「ユ、りさ…っゔ!」
突然後ろから抑え込まれ、咄嗟にその人物を蹴り飛ばした。
〈ほぉ…その状態でも動けるとは…〉
ニヤリと笑った男は、頭巾を深く被っており良く顔が見えない。
どこの誰か問いたくても、呂律が回らない。
〈少しの辛抱だ…大人しく捕まってろよ、セン副将軍殿。〉
「…っ!」
〔セン様!〕
こちらに来ようと、遠くから走ってくるユリさんが見える。
ユリさんまで捕まるのは駄目だ…
「ユリさん!そのまま走って逃げろ!!」
〔…っですが!〕
「良いから!!」
〔っ…分かりました!どうかご無事で!!〕
「………っ。」
李国の方へ走っていくユリさんの後ろを、追いかける影が見えた。
足に力を入れ、その影に向かって双刀を振り下ろした。
「相手は俺だろ…っ…余計なことしてんじゃねぇよ。」
〈ヒュ〜ゥ……やるねぇ…〉
「ぐっ…!」
〈でももう、フラフラだろ?そんなお前にこの人数やれんのか?〉
茂みから5、6人の男達が出てきた…
海賊か…?
それともただの賊か…?
男の言う通り、既にもう双刀さえ握るのに手一杯だ。
〈大人しく、捕まってろよ…な?〉
ニヤリと笑った男が此方に手を伸ばして来る。
その姿が父上と重なった…
「っ!お前達を使役してるのは父上か!?」
〈あぁ、そうさ……なーんてなァ!!〉
後ろから何かで殴られ、俺はそのまま気を失った。
最後に見えたのは…アイツに渡すための大刀…
嗚呼…アイツならこんな事にはならないんだろうか。
薄れゆく視界の中、何故かアイツの顔が浮かんだ…
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