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雨の日
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4.
「また後でって言っただろ」
頭をさすりながら、少し不機嫌そうな宮本は迷うことなく玄関に入ってくる。全身、バケツで水をかぶったのかと思うくらい濡れていて、薄い学生シャツがピッタリと肌に張り付いている。練習嫌いのワリには綺麗に出来上がっている筋肉が、透けてみえた。
「そうだけど、家に来るとは言ってねぇだろ」
思ってもみなかった出来事に戸惑って答えるけど、何故か心臓がドキドキと高鳴っている事に気づく。もしかしてオレ、宮本が来てくれた事に喜んでる…のか?よく分からない。
そのまま履いていたサンダルを脱ぎ捨てて、宮本が奥へ入ろうとする。体中からポタポタと水滴が落ちてきて、玄関から廊下まで濡らしていく。
「ああ!こらこら入るな!濡れるだろ!」
「母ちゃんは?」
「夜勤だよ!ちょっとタオル持ってくるから…」
「それは何より」
そう言って、脱衣所へ向かおうとしたオレの腕を宮本が引き寄せる。結構な勢いと腕の強さで、少し痛いくらい。そのまま、抱きしめられた。じわっと宮本の体温を帯びた雨の水が、身体に流れてくる。冷たい。
「お、おい。宮本?」
色々急すぎて、頭が追いついていない。なんで異常なほど濡れてるのか、なんで抱きしめられてるのか。全然、意味が分からないのに、どんどんオレの体温は宮本に奪われていく。
耳のそばで宮本の息遣いを感じてくすぐったい。冷たくて寒いのに、宮本は一向に動き出そうとはしなかった。
「…なんかあった?」
意を決して、声をかける。宮本がピクリと動いて、両腕の力をほんの少し緩めた。
「鷲見崎が寂しそうだったから、慰めにきたんだよ」
「はぁ?」
そんなずぶ濡れで?ふざけんな。
オレなんかよりもコイツは、今の自分の顔を見た方がいい。
「とりあえず風呂入れよ。風邪ひくぞ」
「鷲見崎があっためてよ」
「だからそういうのは…っ!?」
文句を言おうとしたオレの口を塞いだのは、宮本のキスだった。
「ちょっ…と!宮本っ!」
抵抗しようと思った腕を押さえつけられて、成すすべがない。少し乱暴な宮本の口づけに、息苦しくなって息が上がる。何度も角度を変えながら、徐々に深くなっていく。
どうにか振りほどいたけど、オレは既に軽い酸欠状態で、顔に熱が集中していた。だけど宮本は止まらずに、オレの顔やら首やらを犬のように舐めてくる。
「ま、待って…分かったから…」
軽く制して距離を取ると、やっと宮本が止まった。
「…なにが?」
「なにが、じゃねぇよ。つまみ出すぞ」
オレは自ら、宮本に抱きついた。予想外だったのか、宮本が固まる。驚いた顔をしてるのかな…見られなくて残念だけど。
何があったかは分からない。だけど宮本が、オレと同じように寂しさを感じている気がした。だって、こんな宮本は、らしくない。オレだって、らしくないけど。
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