アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
雨の日
-
5.
恐る恐る、宮本がオレを抱きしめ返す。散々色んなことしといて、いざオレからいくと、なんでそうなるんだよ。ホント、変なやつ。
「これは、合意ってことでいい?」
「殴るぞマジで。…なんで分かった?」
オレが寂しいってことに。
そう続けようと思ったけど、言わなくたって宮本には伝わるだろう。
「顔」
案の定、すぐに返事が返ってきた。返答の内容は予想外のような、そうじゃないような、といった感じだけど。
「なるほどね」
苦笑いを浮かべて、宮本の顔を思い出す。ずぶ濡れの、捨て犬のような顔。宮本の場合はちょっとキツネっぽいけど。
たしかにオレだって分かるかも。そんな顔されたら。
「来てくれて、ありがと」
感謝を伝えたくなったから そう言うと、宮本がオレの頭に頬をすり寄せる。
「そりゃもう、鷲見崎のこと好きだから」
「バカだな」
「そうかも」
オレの両肩を持って距離をとり、宮本が情けなく笑う。どうしたんだろう。こんな表情は初めて見たし、ホントにらしくない。だけど今は、聞いちゃダメな気がした。
宮本が次はやんわりとオレを抱きしめる。もっと距離を縮めて、頬や首元に唇を寄せられた。宮本の身体に無意識に入っていた強い力は抜けて、いつもの雰囲気に戻っている。なんとなくホッとした。
「鷲見崎」
「なに」
「寂しい時はオレを呼べよ。すぐ来てやるから」
「ああ、そう」
「その代わり、オレが寂しい時は鷲見崎を呼んでいい?」
ああ、ヤバい。垂れ下がった犬だかキツネだかの耳と尻尾の幻覚が現れた。初めて知った。コイツ、こんな風に甘えてくるのかよ。これはまぁ、世の中の女子がメロメロ(死語)になるわけだな。
「ダメ」
ちょっと意地悪したくなって、そう返事をする。宮本の顔が泣きそうになった。面白い。
「なんで!?」
「勝手に来いよ。慰めてやっから」
自分でも信じられないくらい、くさいセリフが出てきた。瀬野尾先輩の影響かな。
「…キュンときた」
だけど宮本はなんだか嬉しそうで、つい笑ってしまう。
「鷲見崎、好き」
そう言って、宮本がオレの頬を親指で撫でる。瞳に優しい潤いが増していて、ドキッとした。
「本気で好きなんだけど」
「…もう充分すぎるくらい分かったけど」
「じゃぁ、オレのものになってよ」
それは、どういう事なんだろう。つい意味を求めてしまう。今のままじゃダメなの?オレとお前は、友達じゃないの?どうして…男のオレがいいんだろう。オレはどうしたいんだろう。
「オレは正直、よく分からない」
考えたところで答えなんて見つからなくて、オレは正直にそう答えた。そんな曖昧な返事なのに、宮本は嬉しそうに笑う。なんなんだよ、コイツ。
「いーよ。拒否してくれないだけ、オレは救われてる」
そう言うと、急に宮本がオレをひょいと抱き上げた。
「えっ!?」
いやいや待って。たしかに宮本はオレより10cmくらいデカイけど、だからって170cm越えの男をこんな軽々抱き上げるのか?いや、問題はそこじゃ、ない…よな。
「ホントに無理なら拒否していいぞ」
そのままリビングまで運ばれて、ソファに転がされた。起き上がろうと上半身を上げると、すかさず宮本がオレの上に乗ってくる。
「え?ちょっと…なに?」
頭がグルグル回ってきた。混乱してる。
「まさか、分かんねぇわけないよな?」
「待てよ!だってオレ、よく分からないって…!」
「残念。ここまできて、止まれるオレでもないんだよ」
そう言って、宮本がオレの服に腕を忍ばせ、また口を塞いできた。
――無理なら拒否!無理なら拒否な!
オレは頭で何度もそう唱え、宮本のキスを受け入れる。
――あ。なんか、甘い。
今更、宮本が度々舐めている飴の味に気づいて、いつの間にか、雨の音なんて気にならなくなっている事に気づいた。
雨の日が、こんなあたたかいものなら…悪くないなと思った。
to be continued...
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
20 / 40